巻頭言

公益社団法人 安房医師会

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巻頭言 Vol.51 No.3 2015

2015/05/10(日)

『巻頭言』

              学校保健担当理事 林 宗寛

 道ゆけば路地の角、あるいは屋根瓦の上などに、散った桜の花びらが残っているのを目にします。何となく人生のはかなさを感じる反面、美しい国、日本に生まれてよかったなと思う今日この頃です。
 思えば二年前の六月、二度目の安房医師会理事を拝命いたし今日に至っております。他の皆様に遅れを取るまいと、ひたすら暗中模索の状態でやってまいりましたが、ふと気づくともうじき任期満了です。今思うと、あっという間だった感があります。不束にして至らぬ点も多く、会員の皆様にはご迷惑をおかけした事を申し訳なく思っておりますが、あとしばらく頑張りますのでご容赦願います。
 自分は学校保健担当理事です。学童の保健、健康に対する行政との関わりや折衝は苦労もあるものの、医師とは違った立場の方々とのふれ合いを通じて新しい観点の発見や驚きなど、興味深いものも多々ありました。中でも印象深いのは小児メタボリックシンドローム健診指針の再検討の仕事でした。小児メタボリックシンドローム健診に関しては、現在のところエビデンスのしっかりしたガイドラインが確立しておらず、かなり古い判断基準での健診が行われておりました。そこで、実情にマッチした基準を策定すべく、小児科医を中心としたチームを作り、会議を重ねて新基準を作成いたしました。昨年、安房郡市四行政と擦り合わせを行い、来年度からの実施を念頭に検討中です。実情に即した施行可能なものができたのではないかと思っておりますが、後任の理事にしっかりと引き継いでいきます。
 安房医師会の現在の明るい、前進すべき話題としては新医師会館の創設(可能か? または間借り?)、およびホームページのリニューアルがあげられます。両者とも実行グループを立ち上げ、前向きの姿勢で検討中です。ホームページに関しては具体的かつ着々と進捗しております。新医師会館については未だに「?」の状態ですが、鋭意進行中です。
我が医師会も永い歴史を誇り、地域住民のためにも今後ますますの発展が望まれます。理事を退いた後にも、我が医師会を愛する気持ちは変わらず持ち続けます。今後とも皆で頑張っていきましょう。


巻頭言 Vol.51 No.2 2015 予防接種における医療事故防止に向けて

2015/03/10(火)

地域医療・災害救急医療担当理事 野崎 益司

 誠に残念なことであるが、医療機関におけるワクチンの誤接種(予防接種実施規則に反する事例)が後を絶たない。安房医師会では昨年、接種事故防止対策の一環としてワクチン接種に関するリスクマネージメントに詳しい専門家を招聘し、医師、看護師および医療事務員を対象に講習会を開催するとともに、すべての会員へ講習会で使用した事故防止ろうかという疑問を抱くのは至極当然のことである。現在我が国では異なる2種のワクチンを同時以外に接種する場合、初回が
不活化ワクチンなら6日以上、また生ワクチンの場合には27 日の間隔をあけて次のワクチンを接種することが義務付けられている。この日数設定の根拠は、副反応の出現時期が不活化の場合は1週間以内に、また注射生ワクチンの場合は接種後4週間までに出現しやすいので、その間は他のワクチン接種を控えた方がいいだろうという考え方に基づいている。しかし副反応らしき症状が発現している子供に対し、何のためらいもなく次のワクチンを接種する医者が果たして存在するだろうか。またその期間内に異種ワクチンを接種し、もしも何らかの副反応が生じた場合、どちらのワクチンが原因となっているのか判らなくなるというのも根拠の一つとなっているらしいが、この理屈からすると混合ワクチンや異種ワクチンの同時接種など到底あり得ないということになってしまう。とくに現行の同時接種は厳密には接種間隔が最も短い異種ワクチンの接種であることから、それを認可するためには異種ワクチン接種間隔の規定解除が前提でなければ全く理にそぐわないことになってしまう。 このような現状を鑑み、日本小児科学会は平成24 年9月付けで当時の厚労大臣であった小宮山洋子氏に対し、異なるワクチンの接種間隔変更に関する要望書を提出している。その中で同学会は、注射生ワクチン接種後、次の注射生ワクチン接種までの間隔は従来通りの27 日とする一方で、その他の接種間隔には制限を与えるべきでないと主張している。参考までに、米国においては疾病予防対策センター(CDC)の接種間隔規定を採用しており、これによると同一のワクチン接種または注射生ワクチン同士の接種以外においては接種間隔を制限する必要はないとしている。英国をはじめ、すでに多くの国でこのCDC の規定が採用されており、これが現在の世界基準になっていると考えるべきであろう。
 予防接種の効果と安全性を確保するために実施規則の設定が必須であることは言うに及ばない。しかし異種ワクチンの接種間隔に関する規則は単に接種スケジュールを複雑にしているだけであり、多忙な外来業務の中ではそれが医療側に負担(ストレス)になっていることは間違いない。また異種ワクチンの同時接種を勧める際、この規則の存在下で安全性を説明するのは事実上不可能である。一方子供たちの側においても、接種日がインフルエンザの流行期に重なるなど、定期または任意接種を受ける機会を失っている子供の数は決して少なくないはずである。いずれにしても、この規則に関しては負の側面しか見えてこないというのが多くの医師の感ずるところであろう。
 最後に、現時点におけるワクチン接種は現行の予防接種実施法に従って粛々と履行すべきものであり、たとえ無意味だと判っていても確信犯張りにこの規則に反する行為は厳に慎むべきである。その上で、医師会という組織を通じ、国に対して予防接種実施規則の見直しを要望することが肝要であり、結果的にはそれが真の接種事故に対する最も有効な防止手段となり得るのではないだろうか。


巻頭言 Vol.51 No.1 2015 新春初感

2015/01/10(土)

安房医師会会長 小嶋 良宏

 松の内の賑わいも過ぎましたが寒気まだまだ激しく、植物の新芽が出揃い、春の息吹を感じるにはまだまだ早いようです。あとひと月もするとゲレンデのリフトからふと下を覗けば、小さな蕗の薹を見ることができるでしょう。
医師会ニュース新年号に記載する来年度の事業計画の総論案もこれで2 回目となりました。昨年度の事業も引き続き継続し、内容の充実を図る所存です。

1、在宅医療関連について
 2025 年問題に関しては数年前からマスコミその他で報じられ広く知られていることです。また、この安房地域においては、働き場所の減少などにより生産年齢人口の低下に伴い、少子高齢化は顕著に進行し2033 年には限界集落になるとの予想もあります。
このような社会現象に伴い、独居老人や社会的弱者は通院医療、入院医療に支障をきたし、今後ますます在宅医療の必要性、重要度は増します。
昨年度は、理事会内部での在宅医療関連の勉強会を開催、行政とは協議を重ね館山市新井地区をモデルケースにした地域包括ケアー会議に協力、さらには老人保健施設の責任者とも会合を持ち、医師会として今後どのように協力していくのかを話し合いました。
まだまだ手探りの状態ですが、何をどのように医師会として関わっていくのか議論を重ね、今後の10 年間は在宅医療関連については重要課題とし、行政や関連施設と継続して協力していく所存です。

2、新医師会館について
 旧医師会病院を委譲した後、数回の引越しを経て、現在は会員の好意により現在の場所に移転してきました。その好意にいつまでも甘える訳にもいきませんので、いつかはこの場所を離れる必要性があります。理事会にて再三再四議論を重ね、新医師会館建設検討委員会を昨年11 月に発足しました。この会の趣旨は、新医師会館を建設可能か否かを検討する委員会であり、決して新医師会館を建設することが先に決まっているわけではありません。委員会からの答申期限は5 月とし、建設可能であれ不可能であれ理事会にてさらに審議し、6月の総会には上程予定としています。

3、学校保健について
 昨年、会員の方から学校保健についての意見をいただきました。その要望は、今行っている健診について考え直すこと、さらには視力維持の意味、衛生管理、事故時の対応、疾患の話、目の不自由な方への接し方などを教育、啓蒙、また、養護教諭に対しての視力測定などの研修をしたらどうかという提案でした。
毎年春に会員の協力のもと幼小中学校、高校の健診を行っておりますが、この健診については法律で決められていることですのでそれを実施しない訳にはいきません。
今回の意見は眼科領域に関してだけでありましたが、内科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、婦人科や整形外科など多くの診療科に共通する事柄です。児童生徒の健康を守っていくことは当然のことであり、眼科領域だけにとらわれず、今回の意見を広い意味としての健康教育としてとらえ、引き続き教育委員会と実施に向けての問題点や方法などを協議していきます。

 上記3 点以外にも看護師不足対策、予防接種関連など数多くの問題を抱えているのが現状です。理事会にて粛々と審議し、5 年先、10 年先をも見据え地域住民、医師会のために使命を尽くす所存です。
 この巻頭言は加筆、訂正をしたのち、3月の総会での事業報告総論案として提出いたします。


巻頭言 Vol.50 No.6 2014

2014/11/10(月)

安房医師会副会長 竹内 信一

 昨今の日本はどうなっているのでしょうか?デング熱の集団発症(秋口になり終息していますが)、セアカゴケグモの集団発生、また、この夏の猛暑、ゲリラ豪雨、さらに最近の戦後最大の火山災害といわれる御嶽山の噴火です。日本人は再び平和ボケし、傲慢にも自然に対する畏敬の念を忘れてしまったのでしょうか。
 一方、医師会員である我々や医師会にとって重要な問題である医療や介護はどうなっているのでしょうか?国は盛んに2025年問題(私もその一人ですが)、団塊の世代が後期高齢者になる時に抜本的な医療、介護改革を進めようとしています。内容は医療費制御など国民に犠牲を強いる厳しいものとなっているようです。現実はどうかというと、少子高齢化は益々進み、地方の疲弊は急速に進行しています。こういう時だからこそ、医師会の役割、医師会員の結束が重要となっていくのではないでしょうか?
 私は館山に単身赴任して約12年、地域医療に携わり、医師会の理事としても3期になり、会員の皆様方と努力してきたつもりです。では、今後はどうしていったらいいのでしょうか?安房地域の人達は少子高齢化といった現実を認識した上で、この地域を愛しているのではないでしょうか。こういう意識を持った人々が暮らす地域だからこそ、医師会が関与、貢献できる機会が益々増えると信じるようになっている今日この頃です。では、具体的にはどう進めていったらいいのでしょうか?その一つが現在小嶋会長が提唱している在宅医療への積極的な関与だと思います。そのためには、病診連携、疾病連携はもちろん、介護現場、行政、市民と手を携えて進めていく必要があるでしょう。また、積極的に住民、行政に対する医療、介護に対する認識、啓蒙活動も重要な医師会の施策になると思います。
 こういう時に、タイムリーに七浦診療所の田中かつら先生、安房地域医療センターの西野洋先生を中心とした市民フォーラムで、「あなたの最後はどう迎えたいですか?」というテーマで行なったことは大切なことでした。今後もこういったテーマを含めた市民を巻き込んだ議論に医師会は積極的に関与していくべきだと痛感しています。今後、くどいようですが少子高齢化が益々、進んでゆくこの地域において医師会の存在意義が問われていくのは当然でありますが、私は会員それぞれが地域医療についての思いを一つにし結束してゆけば少しずつ必ずしも明るいとは思いませんが進んでゆくと信じています。皆さん、牛歩の一歩でもいいではありませんか、頑張ってゆきましょう。
 吉田松陰の言葉に、「志定まれば、気盛んなり」とあります。「やるべきことが明確になりさえすれば、あとは馬車馬のようになって実行する」という意味ですが、これからも微力ではありますが、医師会活動に参加してゆくつもりですので何卒よろしくお願いいたします。


巻頭言 Vol.50 No.5 2014

2014/09/10(水)

安房医師会理事 原 徹

 このたび8年余に及んだ千葉県医師会の役員を退き『安房での生活』に集中することになりました。
 任期中、安房医療圏の皆様には多大な御迷惑をお掛けしたことをお詫びすると共に、地域から強く支えて戴いた事を心から感謝いたします。振り返ってみると、安房医師会の基盤であり、誇りでもあった旧安房医師会病院の運営委譲、地域医療再生基金への対応、医師会組織の新法人への移行、それに伴う県医師会新会館の建設・組織改編、さらには東日本大震災の発生と激動の時期であったかと思います。特に旧医師会病院への対応は安房地域内だけでは到底解決できるものでは無く、外部からの評価ならびに指導を仰ぐことで、問題解決への最終的な対応が定まりました。当時の宮川安房医師会長の下、『病院機能を損ねる事なく運営主体を委譲する』決断を行い、多くの方々の御理解・御支援を得られた事、また太陽会・鉄蕉会の大局的な御判断・御協力、そして何よりも旧病院職員の皆様方が地域医療の維持・確保に対し、献身的に御理解して戴いたからこそ達成できたものであり、これにより安房地域の医療提供体制を維持し護ることができました。当時は全国的に地域医療が急激に崩壊し始めた時期に重なり、社会不安や不満が大きく膨らみ、各地でも様々な取り組み・施策が行なわれました。しかし多くの事例では『意見の対立』が生じ、『遺恨を残した』事例が少なくないことも学んできました。翻って医療の現場では常に『診断=判断』を求められ、それに基づく『治療=実行』を行っています。そして人間は、実行に移すにはもう一つの重要なプロセスが必要になります。即ち、『解釈』と言う極めて特異的な過程を踏み、自身の中で『納得』することが必要である事かと思います。『判断』は動物でも行うことですが、様々な理由や理屈を加え『解釈・納得』するのは人間だけでは無いでしょうか?厄介な事に『解釈』はさらに『感情』と言う鎧を纏い、揺るぎないものとなります。この『解釈』の差で意見が対立し、宗教界でも同一教義に対する解釈の差が納得できず、宗教戦争まで招いたことは歴史を顧みれば明らかなことです。この人間の特技たる『解釈』の部分が実に複雑であり、情報化社会の中では、時に巧みに操作誘導され、また個々の知識・経験・能力等によっても様々な形に変貌します。この『解釈の多様化』が人間社会の様々な対立(コンフリクト)を生じていると考えます。 
 『地域医療』の定義は『医療従事者が地域の住民に働きかけ、疾病の予防や健康の維持・増進のために活動する事』そしてその特徴としては『地域の行政や住民組織と連携・協力して進めて行くこと』であると思います。そして地域医療の主体者は『住民』、『行政』、そして提供者としての『医療従事者』の三者であると理解しています。私のこれまで経験した地域医療崩壊を振り返ってみると、それぞれの主体者が『心=規範・志』を支えるための『技=組織・システム』が十分機能せず、さらに『体=資金・人材』も不足した状況に陥り、三者間のみでなく各主体者内部での『解釈の違い』が生じ、充分な対話も成立しないまま、責任転嫁・対立が始まり、結果『解決への希望』が断たれた現場医療従事者の立ち去りと、関係者の諦めが拡大、その結果として地域医療が崩壊してきたものと思います。さらに悪循環が起こり、医療機関は競争原理の下で運営維持のため公的医療の解釈を曲げ、従事者の労働環境を犠牲にしてまで、患者さんへのサービス向上に努めざるを得なくなりました。一方、患者さん側にとってはサービス競争の中に複数の医療機関がある為、サービスが気に入らなければ不満やクレームを残し他の医療機関に移り、『批判と不満の対象としての医療』が論じられる様になりました。そしていつの間にか『直ぐに診断がつき、治ることが当たり前』と言う、『医療への過剰な期待と異様な権利意識』が育ってしまいました。この状態を正常化するには『住民』、『行政』、そして『医療従事者』の主体者同士が胸襟を開き、『解釈を共有する』為に対話の場も持つことが喫緊の課題であると考えます。TPPや原発、国家間の軋轢など世の中には重大な問題はたくさんありますが、地域医療提供体制の問題は個の生命だけでなく地域社会自体の命運にも関する大きな問題であるはずです。放置・無関心・対立・妥協、或いは撤退して行くのでは無く、何とか『発展的に解決』して行かなければ安房の将来は厳しいものであると確信しています。そして我々は旧医師会病院への対応で『発展的解決』の一例を経験・学習しています。これからの『安房での生活を護る』には『覚悟をもった地域医療提供体制の見直し』も必要ではないでしょうか? 
 微力ではありますが、これまでの経験・学習を活かし、前向きに臨んで行きたいと思います。


巻頭言 Vol.50 No.4 2014

2014/07/10(木)

安房医師会理事 杉本 雅樹

 この原稿が紙面に載るころには、ブラジルワールドカップが終わっている頃でしょうか?今回はベスト8以上であることを期待しております。
 日本サッカー界の世界への挑戦とその実績には目を見張るものがあります。なぜサッカー界が着実に進歩していったかといえば、ズバリJリーグ100年構想があるからだと思います。“スポーツで、もっと、幸せな国へ”というスローガンのもと、地域に根付いた地道な活動を行い、住民に支持されているからこそサッカーが発展しているのです。そしてなにより、運営されている方々を中心に、ルールにのっとって健全な活動をしているからこそ成し遂げられるものだと思います。
 さて、安房医師会は新公益法人となり、初めての決算総会が終わりました。(執筆中はまだ終わっていません)今回、若輩者の平理事の私が巻頭言を執筆するという大役をいただいたのは、新しい医師会を内外に示すために必要な事だったかもしれません。
 私は、医師会病院が社会福祉法人太陽会に委譲され、安房地域医療センターとして生まれ変わる過程を経験した、今では数少ない医師会理事の一人です。言い方を変えれば、旧医師会病院時代の安房医師会を経験したことのない新理事の部類に入ります。そして、私を含めて現理事の大半は旧体制を知らず運営しております。 “温故知新“という言葉がありますが、我々医師会理事は、先人の教えを大切にしつつ、新しい発想や、チャレンジ精神をもって未来ある組織にしようと努力しております。執行部はじめ理事の方々は、かなりの時間を医師会運営に費やしております。そんな中、いまだに医師会入会金や運営費に絡む問題で、理事会のかなりの時間を使っていることが現状であります。
 私たちは新公益法人を運営する立場として、会員の皆様に対し、面白くない話をしなければならない時もあります。有名な言葉に、“過去は変えられないが、未来はすぐにでも変えられる”というものがあります。安房医師会が未来永劫存続するために絶対に必要なことは、不公平感のない、常識的な細則の上に、会員一人一人が、謙虚に協力していくことと信じております。
 医師会は会員一人一人の心の支えみたいなものです。医師会病院がなくなった今となっては、行政との連携を密にして、よりよい地域を創り上げることが求められているような気がします。小嶋会長のもと、我々安房医師会は一丸となり、医療という専門性を持って、地域の発展に尽くしていければと考えております。
 まだまだ若輩ものではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。


巻頭言 Vol.50 No.3 2014

2014/05/10(土)

安房医師会会長 小嶋 良宏

 暦の上では晩春の今日この頃、朝夕には寒い日々がまだまだ続きます。この医師会ニュースが皆様のお手元にわたる頃、日中の日差しによっては半袖のシャツやパステルカラーのワンピースなどを着る初夏の気候でしょうか。
 昨年6月より新体制の理事会となり、皆様のご協力、ご支援の元、医師会理事会活動は軌道にのりつつあります。理事一人一人の裁量権や個性を尊重、活気ある理事会と思っております。
 懸案事項は多少ありますが、この先一つ一つ粛々と解決していく所存です。
 昨年12 月に審議された事項において、会員の方々に混乱を与えた事項について記します。
 県教育委員会より近隣の安房高校、館山総合高校、長狭高校、安房拓心高校、安房特別支援学校の校医を医師会として推薦するよう文書が届きました。
 理事会にて審議、新公益法人になった今、公正、公平の観点より公募することと決定されました。
 その公募文書の記載に、「健康面等で無理をなされない様に配慮して戴きたい」という文言があり、それによっても多くの会員の方々に混乱を招きました。
 その後、健康面云々という文言は撤回するよう指示、応募された候補者を慎重に審議し、校医を決定いたしました。
 今回の反省するべき点は以下の3項目です。
1、 募集締め切り日が差し迫っており、その人選を焦ってしまった事。 2、 公募という選び方自体を十分に周知しなかったことによって混乱を招いた事。 3、 公募の文書に、健康面等で無理をなされない様に配慮していただきたいという文言があり、さらに混乱を招いた事。
 多くの会員の方々にお詫び申し上げますとともに、以上を反省し、今後は行政その他からの担当医師推薦があった場合、募集方法やその決定についてより慎重に対応するようにいたします。
 今回の公立高校の校医を公募し、県に推薦するという理事会決定を受け、その整合性、公平、公正を保つため、その後の県出先機関の嘱託医、市町の保育所の園医、小中学校の校医の推薦においても公募を行いました。
 医師の推薦の依頼があった場合に公募を行う事自体は公平、公正を保つ意味では何ら問題ないと考えますが、今回はその実施方法を誤りました。
 あくまで新公益法人となった今、会員間での公平、公正を目指すために行った行為であり、今後もそのような募集方法を多用する事をご理解いただきたいと思います。
 この先、新しい事や過去からの前例を覆すことを実施する場合には、アンケートや周知文書を早めに会員に配布し、混乱を招くような事は極力さけるよう務めます。
 また、理事会において様々な意見を述べる理事の発言に耳をかたむけ、より深く議論、採決をも慎重に実施したいと考えます。
 まだまだ未熟な理事会ですが、会員の方々からの叱咤激励のお言葉、多少の御協力、多大なご支援をお願いいたします。


巻頭言 Vol.50 No.2 2014

2014/03/10(月)

安房医師会専務理事 青柳 和美

 弱冠30 歳のリケジョ・小保方先生が、STAP 細胞を発見し、マスコミで話題になっております。ヒト細胞でも同じ現象が起きれば、ノーベル賞も夢ではないと言われており、STAP 細胞作成の簡便さから、山中教授のiPS 細胞を凌ぐのではないかとも考えられております。
 かく言う私も、昔(20 数年前)、ラット胎児組織を使った膵β細胞発生研究に携わっており、実はスウェーデン留学中に、STAP 細胞の存在を仮定していれば、今なら説明できたかもしれない奇異な現象を経験しております。勿論、能力のない私には、それを解決する術もなく(突き詰める面白さも理解できませんでした)、学会で発表はしましたが、誰にも相手にされず、論文にもしていません。もしかして、大発見の種はいつも我々の身近にあるのに、気づかずに通り過ぎているのでしょうね。
 小保方先生のような、研究に対する熱意と根性です! iPS 細胞発見から、発生学の世界は驚くべき早さで、一段と躍進しております。
 これからの治療医学は、現在の対症療法から根治治療に移行していくのかもしれません。我々診療所医師もそれに取り残されないように、勉強していかないと、50年後、医師会は、人気テレビドラマ(漫画)『JIN - 仁-』の幕藩体制から脱却できない御典医集団になってしまうのではと危惧するのは私だけでしょうか?医師会組織も、学問のみならず、同時に新たな医療改革に積極的に関わって行く体制作りが必要かと思われます。
 さて、話は変わりますが、今回は、館山市が行なっている『ふるさと納税』について、ご紹介したいと思います。『館山市ふるさと納税』は、寄付金を使う事業がより具体的に示されている事が、これまでの他市町村で行なっている一般的なふるさと納税と違うところです。現在、指定事業は、『15.指定事業なし』を含め、15 項目となっておりますが、『14.コミュニティ医療推進に関する事業』にご寄付をいただければ、この寄付金に関しては、市健康課が『コミュニティ医療推進基金』として、直接管理するため、医師会としても、より行政と密接に、より具体的に市民健康を考えた地元住民に有益な事業を立ち上げる事ができるかと思います。これまで、行政サイドも新たな医療関連事業を立ち上げるためには、周到な準備が必要な事や、予算の制約等から、腰が重くなかなか動けなかったのも事実かもしれません。医師会員の皆様から寄付される『コミュニティ医療推進基金』が潤沢になれば、従来よりも円滑に、早く新事業を立ち上げられるものと期待しております。この新事業が、うまく機能・運営できれば、次年度には、本予算として計上して、市の大きな事業としてもらいましょう。これが、安房3 市1町全体の医療政策の向上にもつながる事と確信しております。
 さらに、館山市在住の医師会員の皆様も、お納めいただいている市県民税の一部を『ふるさと納税』として館山市に寄付することも可能になっております。比較的納税額の多い会員にとっても、税金の使い道が分かる(自分の意志を反映できる)は、良い事ではないでしょうか? 勿論、会員が寄付された『コミュニティ医療推進基金』が、医師会の別の財布になるなどとは、呉々も、お考えなきようお願い申し上げます。悪くみると、『トンネル事業』『迂回献金』等とも誤解される可能性もありますが、館山市側とも協議を重ね、これらには当たらない事も確認した上で、安房医師会理事会では、『館山市ふるさと納税』を支援しようと決議いたしました。なお、納税額については、個々の会員でその寄付金額が変わってきますので、税理士等とご相談下さい。是非、『館山市ふるさと納税(寄付)のお願い』のパンフレットをお取り寄せいただき、会員の皆様のご協力を心よりお願い申し上げます。
 将来的には、国税においても、納税額の数パーセントは、納税者が希望する政策に税金を使えるようなシステムを作ってくれると、進んで納税したいとの気持ちも芽生えてくるのではないでしょうか? 例えば、政府が20―30 項目くらいの大きな政策を提言し、それに対し、納税者が納税額の3−5%(新たな増税分)くらいは、希望政策に使えるように納税する。今マスコミは、各社莫大な経費を使いながら、『国民は何を望んでいるか?』なんていうアンケート調査をしていますが、そんな方法よりも、もっと直接的に国民の希望を反映するのではないかと考えます。こんな納税の仕方はどうでしょう? 喜んで納税する気持ちにはなりませんか?
 最後に、現在、安房医師会は一部の会員から訴えられ、係争中です。新公益法人となり、これまで、ずっと解決できずにいた医師会入会金問題を解決するべく、前間宮会長、現小嶋会長が苦渋の決断をされた訳ですが、誠に残念な結果になってしまいました。最終的には、どう収まるのかは未定ですが、この小さな安房医師会の会員の皆様と、歪み合う事なく、仲良く、風通しのよい医師会になるように微力を尽くしたいと考えております。


巻頭言 Vol.50 No.1 2014 新春初感

2014/01/10(金)

安房医師会会長 小嶋 良宏

 先生方におかれましては、正月休みを健やかに過ごされ、日常診療に励まれている頃かと存じます。
 多くの人々、また自分にとっても新年を迎え心躍り、事の大小の差異はあるかと思いますが今年一年の計画や目標などを考えていることでしょう。
 昨年は旧看護学校駐車場を売却、数年前からの懸案事項の処理にも目星がついてきた今、来年度への思いを4項目にしぼり記します。
 いわゆるABC 検診を数年後に実施したいと考えます。解説するまでもなく胃がん検診の新たな方法であり、より効率よく、より高精度に検診を行う一つの方法であります。昨年11 月、この方法を住民検診に取り入れたいと考え、館山市長、市議会議員、実務担当者との勉強会に参加したところ、多くの方々の賛同を得ました。その実現の為には、医師会内部での調整だけでなく、行政内、実施医療機関内の調整が必要であり、さらにその3者との調整も必要であります。解決するべき問題点は山積みではありますが、医師会としては今後、より良い検診システムを目指し、会員、行政や実施医療機関である安房地域医療センターと協力しつつ地域住民の健康医師の為に役立ちたいと考えます。 多くの地域において看護師不足が叫ばれ数十年たちます。この地域においては安房医師会准看護学校の閉校、館山準看護学校の閉校があいつぎ、看護師不足に拍車をかけることとなってしまいました。幸いにも亀田医療大学が開学、今春には新たに亀田医療福祉専門学校が開学する予定であります。卒業生が出るのは数年先ですが、看護師不足解消の糸口となるはずでしょう。医師会としては看護師養成機関を少なからず支援し、看護師不足対策に貢献していく必要性があると考えます。その支援方法は、医師会からの奨学金交付も一つの方法ですが、医師会財政状態が困窮しており医師会単独では経済的にも無理があるため、より綿密な計画を立て、行政とともに支援システムを構築、看護師不足解消に役に立ちたいと考えます。
 数年前から総会で事業計画として上程している新医師会館設立の件ですが、会館設立準備委員会なるものを立ち上げ検討していきたいと考えます。幸いにも新塩場の土地が駐車場として現在活用中ですのでその土地を利用するかもしくは他の土地を購入し建設するのかどうか?また、私案ですが館山市にお願いし、市役所内に医師会事務局を間借りする案も考えております。メリットとしては我々が行政とすぐに相談事ができる、また市役所を訪れる地域住人においても医師会事務局が隣接していれば各種相談事の窓口ともなり、貢献できうると考えます。新塩場の土地を利用するのが経済的にも負担がありませんが、少々土地が狭いため駐車場用地が不足する懸念もあります。新たな土地を購入するには経済的には無理が有りますが、多くの問題に対処し、まずは設立委員会を立ち上げ、協議し、身の丈にあった新会館設立を目指したいと考えます。
 この地域の老年人口比率は優に30%を越え、今にも40%に届かんとしている状態です。御老人が増えれば当然の事ながら認知症の患者さんも増えると予想がつきます。昨年秋、認知症関連の学術講演会が開催され、東京医大の実例が示されました。この地域でも認知症対策を早急に押し進め、医師会、地域包括支援センター、会員の施設を結ぶネットワークを構築し、早期発見、早期治療を目指したいと考えます。
 昨年末の出来事でありますが、多大に尊敬し、信望する方から助言をいただきました。彼は先輩医師として、また人間的にも魅力があり、時に意見を聞いていただいたり、頼りがいのある人物です。その彼から、「些末な問題に煩わされて本筋の仕事に支障があってはならない」と。はっと閃光を浴びたように目が覚めました。昨年はあまりに直近の問題解決に振り回されていたかもしれないと。多くの皆様のあたたかい御協力、御支援に感謝しつつ、新年度はすぐそこにある問題に対処するだけでなく、遠い未来の医師会像を考え実践していきたいと思慮を馳せる、あたたかい春が待ち遠しい冬の寒風吹きすさぶ晴天の毎日です。


巻頭言 Vol.49 No.6 2013

2013/11/10(日)

安房医師会副会長 清川 恒

 2020年、東京オリンピック夏季大会開催が決まった。アルゼンチンで開かれたIOC総会で、日本の招致委員がスピーチを行ったが、私の一番のお気に入りは滝川クリステルのスピーチだ。フランス語は理解できないが、美人の口から流れる、耳に心地よい言葉の流れ、そして締めくくりの言葉。「お・も・て・な・し」笑顔・合掌。これで東京オリンピックが決まった!と思っている。49年前の第18回東京オリンピックの時、都内文京区に兄と下宿していて、開会式の日、下宿の物干し場でジェット機の描く五色の五輪を兄と一緒に見上げていたのを覚えている。当時の東京の情景は映画「オールウェイズ・3丁目の夕日」に克明に描かれている。あの街並みが科学技術の発達により、今や超近代的な街並みに変貌している。
 振り返って、我が房州は少子化に超高齢化社会、街並みはシャッター街、空き地と駐車場通りに人の姿が見当たらない。活力の衰えた地方都市によく見る情景。房州はどう変わったら良いのか。老人パワーを積極的に活用する場に活路はないだろうか。 2度目の理事に就任し、13年振りに理事会に出席している。
 医師会病院・看護学校が無くなり、関連事業も減少大分仕事量が減ったと思っていたが、報告事項・協議事項は昔より増えていた。社団法人から公益法人に移行した事により、定款・細則を変更した。組織の基本ルールを変更したのだが、色々の考え方があり、100点満点のルール作りは困難であろうが、納得出来る物を目指して定款・細則検討委員会が立ち上げられている。社団法人時代の定款にも不備・盲点があり、改訂が行われていた。しかし大切なのは不備・盲点を改訂しても、このルールを忠実に、確実に、迅速に実行することだ。過去の医師会にはこの点に甘さがあったと思う。また医師会入会時点で入会希望者に定款・細則の説明をし、周知徹底を図る必要が有ると思う。今後、更なる高齢化社会を迎え既存医療機関のクリニック開設や、未だ、ルールの出来ていない医師の常駐する老健施設の進出に対しての対処法も検討しておく必要が有る。これらの問題も含めて公益法人としての基本ルールを作り上げていきたい。不幸にして考え方の違いからトラブルに発展してしまった事例も、何とか折り合い点を見つけ人間性善説の主旨のもと円満に解決し、風通しの良い和やかな安房医師会にしたいと思う。