巻頭言

公益社団法人 安房医師会

電話
サイトマップ

巻頭言 Vol.49 No.5 2013 所信表明

2013/09/10(火)

安房医師会会長 小嶋 良宏

 安房医師会理事会の新体制発足後、早くも2ヶ月が経ってしまいました。
 遅ればせながらこれからの会務のあり方、懸案事項などについて記載いたします。 医師会運営の大原則は、“和を以て貴しとなす”との如く、役職員との和であり、役員一人ひとりの能力、個性を最大限尊重し、全員一丸となって諸問題を解決して行く所存です。我々14名の理事は、利己の満足や名誉などのために役職に就いた訳ではなく、地域住民の健康維持・増進に役立つ様、会務の運営を行い、将来を見据えた方向性のある活動をその目標としています。
 下記は箇条書きになりますが、今後の方針について記載します。
1、協議事項に関しては、定款や細則に沿って粛々と決定していくのが基本であり、その決定に至る方法は合議であると考えます。理事一人ひとりの声に耳を傾け、意見や考えを十分聴き、皆で考えた上で、決断・実行に移して行きます。
2、各理事にある程度の権限を委嘱します。理事の責任において諸問題を解決、実行していくという方法を考えていますが、計画段階とその結果は理事会に報告しなければなりません。
3、困難な問題に直面した場合には、諸先輩方をはじめ行政、弁護士、税理士等の各専門家にも相談し、皆で力を合わせ、問題解決を図ります。
4、報告事項、協議事項ともに可能な限り文章として記録を残します。将来、同じような問題が起きた際、我々がどのように考え、対処・解決したのかを記録し、参考とすることが重要であると考えるからです。
5、理事の分担に関しては、一人の理事に負担がかからないよう複数の理事が担当する部門も作りました。保険福祉部門、介護在宅部門、広報部門、救急災害部門、学術振興部門、地域医療部門の6部門です。正副の理事が協力しあえば個々の負担も少なくなりますし、良い考えも浮かんでくることでしょう。
6、“和を以て”との例えは、役員だけではなく、すべての医師会員、行政の方々や関係諸団体等の方々、そして地域住民との“和”で無くてはなりません。和を以った強固な連携で“地域の健康”を守って行きたいと思います。
 今後の懸案事項ですが、大きな課題としては、医師会本会の財務状態改善、新医師会館の建設などを考えています。さらに安房医師会として何らかの特色をも出したいと考えています。具体的には、予防接種や疾病の無料相談会、地域ごとの健康増進教室などです。インターネットを利用した幅広い情報発信も必要かと思います。
 過去に何度か巻頭言にも書かせて載きましたが、会員の皆様ならびに関係諸氏との連携、御協力・御支援なくして安房医師会の更なる発展は望めません。従前にも増した御指導・御鞭撻をお願い申し上げます。


巻頭言 Vol.49 No.4 2013

2013/07/10(水)

安房医師会前副会長 小嶋 良宏

 数年前からの懸案事項であった新公益法人に認定され早くも3ヶ月経ちました。 会員の方々には総会や医師会ニュースを通じ、公益法人について何回か説明をしてきましたが、ここで公益法人と一般法人の違いや、公益法人の基礎事項について、会員として知っておきたい最小限の事項のみ復習してみたいと思います。 我々が選択した公益法人と一般法人との違いは、大きな解釈として、公益法人は世のため人のための活動を重視、広く社会に対し貢献していく事を理念とし、一般法人は共益や営利、柔軟な事業活動を重視するものであります。
 おのおのの認定、許可基準ですが、公益法人は、公益目的事業比率が50%以上、経理的基礎および技術的能力を有し、法人関係者に特別な利益をあたえないものであり、認定が必要となります。一般法人は個々の法人が作成した公益目的支出計画について適正であり、かつ確実に実施されるとみこまれるものであり、許可が必要であることです。
 メリット、デメリットについては、公益法人は社会的信用が高く、事業制限、財務的な制限の存在、行政の監督が永遠、広い情報開示、税制や寄付行為に対しての優遇、一般法人はこのほぼ逆と考えます。
 公益認定には18項目の基準が存在し、これを満たさないと認定は受けられません。18項目すべてを列挙しませんが、大事な項目は公益目的事業を行う事を主たる目的とするものであり、その解釈は1、基礎的経理として、財務状況が健全、財産の管理、運用については理事が適切に関与し、情報開示が行われている事。
2、技術的能力があり、事業を実施するための技術、能力を持つ人材、設備などを有している事。
3、財務基準として、公益目的事業比率が50%以上あり、決められた以上の遊休財産が無い事。
4、理事、法人の関係者に対し、特別な利益供与が禁止されていることであります。 以上の条件は公益法人取得時だけでなく、今後もこの条件を満たす必要があり、もしも数年間に渡り条件が満たされないときには、解散させられる事もあります。

 理事選挙については6月に行われる総会で経験いたしますが、行われた総会で経験していますが、総会では理事を選定し、代表理事選定理事会において互選により代表理事(会長)、業務執行理事(副会長、専務理事)を選任する方法にかわっています。
 また、総会での決議事項は大きく分けて普通決議と特別決議の2種類があり、普通決議は、2理事、監事の選定、選任や貸借対照表、損益計算書の承認などであります。
 特別決議は社員の除名、監事の解任、定款の変更、事業の譲渡、法人の解散、継続などがあり、総社員(会員)の半数以上が出席し、総社員の議決権の3分の2以上の多数により決議することとなっています。
 今後、法律に則って公益法人の運営をしていくにあたり、理事会は今迄以上に気を引き締め正しい行動を、会員の方々にはさらなる御協力をいただきたいと考えます。
 最後になりましたが、公益法人取得に関し多大なるご尽力を頂きました方々にこの場を借りて御礼申し上げます。


巻頭言 Vol.49 No.3 2013

2013/05/10(金)

安房医師会専務理事 青柳 和美

 政治の世界では、TPP交渉参加が決定され、医業界においても大きな影響が予想されます。第2の黒船来航に例える評論家もいますが、既得権を守るためだけに何でも反対(TPP反対)という姿勢は好ましくないと考えます。医師会も古い体質を変えていかねばならないし、地域医療提供体制、すなわち、『真の住民と医療のあり方』についても考え直さなくてはならない時期に来ていると思われます。安房医師会も平成25年4月1日から公益法人となり、これまで以上に地域医療に責献していく責務を負うことになりました。
 厚労省の試算によると、14年後(2027年)から我が国の死亡者数はピークを迎え、現在の2倍となります。しかし、ベット(病床)数の増加は見込めず、地域によっては半分の人が在宅死、最悪の場合は路上死なんていうこともありうると思われます。一方、安房地域に関しては、人口が少ないことと、現時点からの高齢化が幸いして?、急激な死亡者増加はなく、今後14年間も現在と同じで、年間約2,200人程度の死亡数が続くと推定されています。従って、今ある医療機関が、14年間存続すれば、数字上では今と同じ医療を継続できることになります。しかし、需要と供給の関係から、医療関係者もどんどん都会に流れてしまうかもしれず、当地域でも、ベット(病床)数維持ができなくなってくるかもしれません。現在千葉県における幽霊病床(医師・看護師不足等により、病床を利用できない)数は、2400床を越えると聞いております。安房地域の病床数と医療機関数が、今後減らないことに期待します。14年後の私と言えば、生活習慣病の専門クリニックを開設していながら、自己健康管理のできない院長は76歳。認知症も加わり、医療者としては全く役に立たない存在となっているかもしれません。医師会の先生方も、健康に留意し、後世を守るつもりで、次世代の若い医師や医療スタッフを育てていくように、ご尽力をお願いいたします。また、行政の方々にも、この地域出身の医師、医療従事者には、地元に戻って来てもらうように、あらゆる手段を使って、働きかけをお願いいたします(手段は問わない!)。将来のこの地域の健康、並びに、医療充実を考えるならば、決して無駄な出費(税金の無駄使い)とは思えません。
 平成22年12月時点での『人口10万人に対する医師数』は、全国平均が219人、千葉県は164人で全国45位(最後から3番目)にランクされます。一方、安房地域は380人(千葉市内261人)と全国でもトップクラスの医師充足地域であると言えます。これは勿論、亀田病院(亀田グループ:鉄蕉会、太陽会)という大きな病院の存在があるからであります。亀田病院がなければ、安房地域は、逆に、全国有数の医療過疎地域になっていたのかもしれません。亀田病院では、既に将来を見据え、医療看護大学や医療看護学校の開設等の対応を進めてきています。しかし、残念ながら、この地域で働く全ての医師の集合体であるはずの安房医師会では、その具体的な対応策が、まだ充分には協議されていないのが現状であります。個々の医療機関それぞれに事情はあるかもしれませんが、亀田病院、館山病院、国保病院、この地域の多くの病院にも、是非ともご協力いただき、安房医師会としては、行政と強く連携して、この急難(2027年問題)に対処していくべきであります。開院6年。医師会理事となって2年目に、医師会専務理事(総務)という大役を仰せつかり、この1年間職務についてきました。自分の能力のなさ、並びに、これまでの医師会の歴史も知らずに働いて来たことで、過去の総務担当理事の様に働くことができずに、医師会員・役員の皆様にはど迷惑をかけて来たことも多々あると思います。この場を借りてお詫び申し上げます。この1年間、常に『医師会とは何ぞや?』と考えながら、職務に臨んできました。最近は総会への出席者も少なく、もはや、昔の政治的圧力団体のような医師会の使命は終わりました。新たな、医師会を構築しなければなりません。平成25年3月の安房医師会会員総数は283名、そのうち、勤務医会員202名(亀田病院:144名)の構成(勤務医71%)になっています。医師会勤務医の先生方にも、どんどん医師会にご参加いただき、積極的に意見を述べていただきたいと思います。今後、個人的には、勤務医が地域医師会会長になってもよい時代とも考えます。『全国トップクラスの医師数充足地域』 =『全国トップクラスの真の医療充実地域』になるべきではないでしょうか?過去には、総合健診で全国的にも有名な安房方式を成し遂げた安房医師会です。地域医療充実のための新たな安房方式を立ち上げようではありません


巻頭言 Vol.49 No.2 2013

2013/03/10(日)

社会保障制度で人は幸せになれるのか
~武士は喰わねど高楊枝~

安房医師会副会長 原 徹

 昨年末の衆議院の選挙では12 にも上る政党から施政方針が挙げられましたが、社会保障制度の在り方に関する論点は十分とは言えない状況にありました。長引く経済不況に加え大震災からの復興という喫緊の目標が加わった現在、社会保障に関する具体的な施策は昨年8 月10日に成立した「社会保障制度改革推進法」等に沿った形で安倍内閣が実行して行かなければなりません。またこの推進法だけでなく、社会保障と税の一体改革に関連した法案は既に15 件も成立していますが、このうち13 が社会保障に関連するものとなっています。ところで皆様はその内容をご存知でしょうか?私自身、消費税の増税やTPP の事ばかりが気になり、国の社会保障制度の在り方を真摯に考えることが些か疎かになっていたと反省しています。翻って社会保障制度を担うのは公助だけではなく、互助による年金・保険制度がその根幹を成しています。
 社会保障制度の中で大きなものは公的年金制度と共に医療・介護保険制度であり、さらには福祉分野での公的扶助(公助)の問題も重なり、社会保障と公費負担の根本的な問題へと発展しています。ところが最近、相互扶助(互助)と公助の区分けが極めて曖昧な状況にあります。既に基礎年金の1/2 が公費負担となり、医療保険でも市町村国保の約半分が保険料では賄えず公費負担、介護保険では初めから財源の半分が公費となると、「拠出を前提とする互助=保険方式」なのか、「税による公助=税方式」なのか訳が解らなくなってきているのが現状です。
 一方、給付を受ける側としては“困っているのであるから財源は兎も角、直ぐにでも支給を行うべき”との要求が生じます。さらにこの“困っている状況” を客観的に判断することが極めて難しく、健康で資産があっても不安・不満を覚える方は少なくないのも現実です。一方、政府の文書にも安全だけでなく「安心」が最近やたらに目に付きますが「安心や満足」は感情的な個人の問題であり、現実の社会にこの観念を持ち込む事は些か問題があると感じています。然し各種の安心を売る民間保険が市場を拡大している現実は「人間は理性より感情によって動く存在である。それゆえ人間社会は脆いものである」ことを証明しているとも考えられます。この様な感情過多に流される民主主義の到達点は個人主義と物質主義であるとも言われており、これに対峙するには各職域の専門家が権威を回復し、真のプロフェッショナリズムを発揮することにより教育指導して行くしか無い様に感じています。
 ところで我が国には“武士は食わねど高楊枝”=「困っていてもなるべく他人には迷惑を掛けず、自助を基盤とする。忠義・滅私奉公という責務の代償として保護・救済を受ける仕組みが成り立たなくなっても強い自負の念を保つ」が在りました。勿論これを現在に適応する訳には行きません。歴史的には産業革命後に、“搾取する者” が封建体制下では考えられない程、多数生まれ、貧富の差が“目に見えて拡大” したこと。また“個と生命至上主義を尊重する思想” が主流となった事により様々な社会問題が発生し、封建体制下での相互扶助の形態に代わり、共済組合・友愛組合・協同組合・労働組合などの“集団的な自助” を目的とする様々な団体が出来上がりました。然しこの様な団体は厳格な規則と組合費などの一定の拠出や組織活動への参加を義務付けることが原則であり、その代償として疾病・死亡・失業・老齢などを対象にした給付を受けるものであり、この対象も限定されたものでした。即ち義務の見返りとしての給付が基本でした。一方、我が国では敗戦後の社会保障制度構築の過程で保証の対象を“全ての国民”とする国民皆保険制度をその目標とした為、諸外国に較べ医療は公的なものとの認識が強くあります。これは戦勝国である米国の指導も強く影響したものであることは否定できず、共産主義と資本主義の対立の中で、資本主義体制下にあっても“富の再分配による弱者救済” が可能であることを実践したものと理解できます。その結果、医療は全国どこでも適切な医療が受けられることが国民の権利であるとの認識が共有され、昭和36 年には皆保険制度が構築されました。そしてこの保険制度は給付内容の質、費用対効果を勘案しても極めて有効な制度であり、世界に誇るべき偉業でもあります。然し顔の見える互助の比率が減り、公助の比率が増すに伴い、被保険者の権利意識が強まり、ともすると医療に関する不安や不満が強く出される結果を招き、何よりも義務が何時の間にか見え難くなり、公的医療保険の存続も危ぶまれる状況に陥ってしまいました。今こそ公的医療保険の意義、価値を国民により理解して戴き、これが存続できる様、我々医療に携わる者が真のプロフェショナリズムを発揮し尽力すべき時ではないでしょうか?ドイツでは医師会が自治権を持ち、地域毎の医療施設や医師の配置、病床数などを決めています。その権利を執行するには医師一人一人の義務・責任が当然問われるものです。
 安房医師会は開業医の利権保護の為に在る組織では無く、安房地域に為すべき医療保健・福祉政策を考え、実行にも携わる専門家集団であることをその存在目標として戴いています。県下の医師会では初の公益法人認定を受けることが叶った今、本会の精神基盤として“武士は喰わねど・・” の思いを忘れずに歩んで行きたいと思います。


巻頭言 Vol.49 No.1 2013 年頭初感

2013/01/10(木)

安房医師会会長 間宮 聰

 新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
 民主党の野田総理大臣が3党合意の際に約束した「近いうち解散」を有言実行したため師走の衆議院解散となった。国会議員の離合集散が見られ少数政党の乱立で、有権者にとっては選択の難しい選挙となった。
 平成24年11月3日に千葉県医師会医学会、第13回学術大会が開催された。メインテーマは「在宅医療~これから迎える超高齢化社会~」と題して5人のシンポジストによる発表があった。厚生労働省の「2011簡易生命」によれば、日本人の平均寿命は男性79.44 歳、女性85.90歳であり、男性は世界8位、女性では世界2位の長寿国である。日本人の平均寿命は全ての癌が治せるようになったとしても、今後の平均寿命の延びは3年以内だという。もう日本人の長寿化は限界に近くなってきた。千葉県は全国2位の高齢者人口の増加率を示し、安房地域は県内でも高齢化率の最も高い地域である。診療所の外来利用者数は長期処方が増えたことや不景気による受診控えにより減少していくが、高齢者人口の増加により入院が必要な患者は増えていくことが予測される。しかし、それに必要なベッド数の増加は望めないので、入院適応があっても入院できない状況が確実に増加していく。ゆえに在宅での療養患者の診療や看取りが増えていく。昭和20年代は8割が在宅での看取りであったが、現在は8割以上の患者が医療機関で死亡し、自宅で最後を迎える方は1割程度である。少子高齢化のため最近の外来受診者は高齢者が多く、子供が少ない。社会状況の変化もあり、患者自身の意識や家族の要望も入院ではなく、自宅での療養や最後を迎えたいと希望する方が増えてきたように感じる。マスコミの報道によれば、8割以上の方が自宅での最後を希望しているという。私は2年前から寝たきり患者の訪問診療に力をいれているが、訪問診療や訪問看護を導入している人は特にその傾向が強い。往診のため患家に出向けば患者さんの生活状況や家族構成、看護にあたっている家族の状況がよくわかる。それは治療方針の決定に役立つ。在宅での療養には患者、家族にとって心配や不安が付きまとう。そこを何とかしてあげるのが「かかりつけ医」ではないだろうか?
 厚生労働省は在宅医療の推進が今後の医療体制の重要な基盤として、診療報酬制度上で優遇を与えている。団塊の世代が平均寿命に達するまでの今後20年間を見通し、かかりつけ医が在宅医療を往診や訪問診療で支えていくべきであり、その体制をわが医師会は早く築くべきと考える。そのために、会員の皆さんには、外来診療中心から視点を変えて、往診や訪問診療を行っていただきたい。我々がまず在宅医療を始めなければ、看護や介護との連携が進まない。医師1人では負担が重い。そのため安房医師会会員は、病診連携や診診連携を進めていくべきだ。そして行政や介護に携わる全ての職種を巻き込んで、安房地域の在宅医療を確立していこうと考えます。


巻頭言 Vol.48 No.6 2012

2012/11/10(土)

安房医師会副会長 小嶋 良宏

 厳しい残暑は雨が降るごとにいつの間にやら終わり、涼しい秋の気配が感じられる今日この頃である。
 健康の為と思い、週に4回ほどランニングをしていると、気温や日差しばかりではなく、海の色や周りの景色、樹木の香りなどが夏から秋に切れ目無く移行していく事を実感させられる。ランニング中は、なんとなくいろいろな事を考えながら走っている。
 暑い時期には、「夏を制するものは受験を制す」、今の時期なら「勉学の秋、読書の秋」、「箱根の紅葉と温泉」、「南国へのバカンス」、「冬のスキーツアー」など雑多な内容であるが。この巻頭言も走りながら考えた事をまとめたものである。
 理事会は間宮新体制になり半年過ぎた。ここでその活動の一端を紹介しよう。
 数年前から春の総会時に事業計画として記載していた医師会主催の学術講演会の見直しの件である。
 見直しの理由というのは、今迄、講演内容は製薬会社、事務局まかせにしており、担当理事および三役もあまり関知していなかった。
 結果、その内容が悪く言えばワンパターンで、薬品絡みの高血圧、高脂血症の話題ばかりが多く見受けられるようになってしまった。
 また、出席者は減少傾向にあるものの、興味を引くような話題性がある講演会には多くの参加がみられる。本年3月の歯科医師会との合同講演会が良い例である。
 事業計画として認められたからには、何としても見直しをしない訳には腹の虫がおさまらず、この春、理事会協議事項に上程し理事会決定された。
 協議の糸口として、まずは会員にアンケートを送り、その結果を検討して今後の方針を立案することの決議がなされ、さっそく実施。その結果は残念ながら、 回答数も少なく、斬新なアイデアも見当たらなかった。
 さらに協議をすすめ決議された内容は、
 1、1年間の演題スケジュールを理事会決定する。ただし演題内容は厳密にせず、広い意味とする。
 2、スケジュールを製薬会社にアナウンスし、講師の選出をお願いする。
 3、理事会は提出された演題内容、講師を吟味し、もし考えにそぐわない場合には見直しを要請するというものである。

 10月5日、安房郡市担当の製薬会社担当者を集め、上記の内容と今後の方針についての説明会を実施。各会社がどのような形で関わる事が出来るのか否かを報告するよう指示した。
 報告の結果を整理し、さらに協議を重ね、来年には思わず出席したくなるような内容の、興味を引く有意義な講演会を開催したい。

参考事項 年間スケジュール (案)
 1月  細胞、組織障害
 2月  循環障害
 3月  炎症
 4月  免疫
 5月  腫瘍
 6月  先天異常
 7月  環境
 8月  休み
 9月  インフルエンザワクチン
 10 月 四師会との合同講演会
 11 月 漢方
 12 月 アレルギー一般


巻頭言 Vol.48 No.5 2012

2012/09/10(月)

安房医師会専務理事 青柳 和美

 ロンドンオリンピックも終了しました。 皆さんも、朝早くから夜遅くまでオリンピック競技に夢中になり、きっと寝不足になられたとお察しいたします。そんなオリンピックの最中に、いつの間にか消費税値上げ法案が可決。そして、オリンピックメダル獲得に躍起になり、国民が国家主義的になっている時に、竹島、尖閣諸島の領土問題が起きております。
 ところで、私はその昔、スウェーデンで留学生活を送ってきました。当時のスウェーデンの消費税は23%でした。しかし、あくまでも感覚的にではありますが、食料品は日本より安く、衣料品など日常品は日本で買うのとほぼ同じ印象でした(内税だったので消費税を払っている感覚がなかった?)。給料の安い研究者生活では、消費税の安い日本の方が遥かに暮らしにくいように感じました。日本の消費税も、10%ではまだまだ足りず、近い将来に20%を突破するとも言われております。現在の消費税5%でもスウェーデンと日本では同じ負担感なのに、この先消費税がスウェーデンなみになったら我々の生活はどうなってしまうのでしょうか?  話は変わりますが、保険医療に関しては医療施設が受診者から消費税を取ることは出来ません。しかし、我々医療施設が薬品、検査装置、施設設備などを購入する際にはしっかり消費税が掛かります。従って、診療所よりも多くの機器、備品を扱う病院施設の方が遥かにその金銭的痛手は大きくなるかと思います。各医療施設での経営努力と言う言葉で消費税問題は片付けられてしまうのでしょうか?
 安房医師会では、2012 年4 月から間宮聰新会長での体制の下、近々の問題としては、より良い住民検診システムの再構築、予防接種の対応に関し、各担当理事を中心に、これまで以上に行政と協議・連携を密にしております。また、医師会主催の学術講演会内容の充実、平成25年度からの安房医師会公益法人化を目指し尽力しております。さらに、長期の問題としては、高齢化する団塊の世代への対応として、地域の医療供給体制を変更しなければなりません。15 年後(2027 年)の死亡者数は、現在の2倍になると推定されています。現在、千葉県では死亡者の93%は病院で亡くなっています。しかし、死亡数の増加に応じた病床数増加に期待はできず(医師、看護師不足と財政危機)、さらには、もし、医療施設を増床しても20 年後には、また死亡者数が減っていくのですから、病院以外での看取りを検討して行く必要があります。安房地域では、高齢化率が既に高く、また人口増加がない分、15 年後の死亡者数に大きな変化はなく、現在と同じ約1万人/年と推定されています。だからといって、この地域でこれまでと同じ医療を続けられるかは、甚だ疑問であります。需要と供給のバランスから、医療従事者が、益々都会に流れ出てしまうのではないかと考えられるからです。全国の市町村の多くが、財政的に夕張市化している現在、行政からの財源を当てにできる時代ではなくなってきました。今こそ、医療現場を司る4師会(医師、歯科、看護師、薬剤師会)だけではなく、行政、厚生業務を担う全ての業種、並びに住民がまとまり、これからの安房地域の地域医療について考えていく必要があると思われます。他市町村の出方、様子を見るのではなく、安房地域としていち早く、手をつけて行こうではありませんか。これまでの既得権等については、白紙にして検討する事態も起こるものと考えます。枯渇した財政を補うのは、皆様の英知しかないのですから…。
 医師会の先生方の、絶大なるご支援をよろしくお願い申し上げます。


巻頭言 Vol.48 No.4 2012 社会規範の再構築を

2012/07/10(火)

社会規範の再構築を

安房医師会副会長 原 徹

 館山市でクリニックを開設してからこの6月で15年が過ぎました。それ以前の二十数年間は大学病院や所謂大病院と言われる多くの病院で勤務医として働き、最新の技術や薬品、さらに精密な検査などを駆使して診断・治療をすることが良い事であり“不十分な検査や治療は問題である”との思いと、一方では過剰になりがちな検査や治療に対する疑問・反省が心の中で凌ぎあう状況にありました。いざ自分で医療施設の運営を始めてからは医療提供制度が健康保険制度の保険医療養担当規則をはじめとして様々な制度を遵守することで成り立っていること。そして我が国の社会保障制度の根幹をこの医療保険制度が担っている事、また社会保障を担う医療保険以外の各種制度の仕組みとその問題点を学ぶ機会に恵まれました。その上で医療や福祉・介護は人間としての尊厳や、基本的な人権など“人として生きる事の本質”に深く関わる分野であること。そして同時に極めて個人的な問題でもある事から特別な配慮が必要であることを学びました。然し現実では同じ病気でも不安・心配や要求・要望の度合いは人様々であり、特に前者の払拭には何が必要かと悩む毎日でもあります。子供の教育と同様に物を与え(薬を処方する)、検査で安心させる行為は往々にして要望が膨らみ際限が無くなり、却って不安・不信を増長する事も多々あります。同時に当然医療費と言う必要経費が発生します。この特殊な状況下で“医療はサービス業であり、患者さんは消費者である”との見方を持ち込めば患者さんにサービスを提供すること、即ち不安を払拭し要望を適える為に医療行為を行う事が消費を拡大することになります。また情報の氾濫、開示の促進等により不安・不満を煽られる現代社会では“医療と言う消費を加速すること”が進み、その結果“市場としての医療”はその規模を拡大することになります。この理由から“医療や介護を産業として見做し、民間の活力を利用しさらに発展させる事が良い”とのご意見もありますが、冷静に考えればそれに必要な費用を何処から賄うのか?との疑問が生じて来ると思います。戦後急成長を果たした国の経済は現在その成長を止め、社会制度として重要な基盤となった国民皆保険制度も50年の歴史の中で様々な問題が生じています。医療を消費として考える事無く、皆保険制度を社会の安全保障制度の大切な基盤として守る事が今こそ求められているのではないでしょうか? 国の防衛や警察・消防と同様に医療も体の不具合が生じた際、即ち“有事の際”に確実に機能する社会制度として位置付けるべきものであると思います。然し“極めて個人的な問題である医療を公的な制度で運営する”為には更なる相互理解と互助、また同じ社会に共に生きる為には“社会の基本となる共通規範の再構築”が最も重要である事を常に心掛け、今後も精進したいと考えています


巻頭言 Vol.48 No.3 2012

2012/05/10(木)

安房医師会会長 間宮 聰

 この度、平成24年3月27日に開催された第141回安房医師会定時総会において、安房医師会長にご推挙され4月から就任しております。平成18年から6年間会長を務められた宮川準会長からバトンを受け、新たな船出をするのですが、会長に就任してみないとわからない色々なことで大わらわです。行政や各方面からのご挨拶、ご依頼が殺到し、医師会の会長としての前会長からの業務の引継ぎや、旧医師会病院の解体工事についての業者との相談、医師会の理事の役割分担の決定、今後引き継ぎ解決すべき諸問題の確認、安房医師会の今後の方針の決定などやらねばならないことがたくさんあります。責任の重大さを痛感し、身の引き締まる思いです。幸い経験豊富な原、小嶋両副会長や有能な8人の理事が就任し、協力していただき私としても心強い限りです。
 現在、私が今後の安房医師会にとって大切であると考えている事柄を挙げてみます。まず第1は、平成25年11月末までには完了が必要な新公益法人移行に向け、安房医師会は平成25年3月末日頃に公益法人としての認定を受けたいと考えています。公益法人取得には総収入に対し、公益目的事業比率が50%以上という規制があるため、これをクリアーすることと、遊休財産の処分をすることが必要なので、平成23年11月の第139回臨時総会で承認いただいた、旧安房医師会病院や看護専門学校に関連した資産の処分を事故やトラブルなく行いたいと考えています。第2に、在宅医療の推進を目指したいと思います。
 この4月の診療報酬改定において、超高齢社会を乗り切るために在宅医療が重点分野としてあげられました。病床数は抑制策が取られている中、平成25年には団塊の世代が75歳に達し、死亡者数も急増が予想され、終末期のケアや看取りの場所が不足することが予想されます。そのため、患者宅や特養での看取りを促すための施策が盛り込まれています。高齢化率の高い安房の地域こそこの国の方針にそった在宅医療の推進が必要ではないかと考えます。そのため会員の皆さんに、往診(訪問診療)を今まで以上に取り入れていただきたい。救急医療は亀田総合病院や安房地域医療センターを中心に行い、在宅医療は機能を強化した在宅療養支援病院として各支部に1から2箇所なっていただきそこを在宅医療の中心として会員とのネットワークを形成し、安房の救急と在宅医療の分担を行うようにするべきと考えます。第3に、平成24年から安房医師会は総合検診事業から離れたが、今後の住民検診をどのようにするかを行政と模索、検討する必要がある。近日中にワーキンググループを立ち上げ検討する予定です。最後に安房医師会の運営の基本として、会員に情報をくまなく開示し、いろいろご意見を伺いながら、ご協力をいただきすすめていこうと考えていますので、会員の皆さん、行政の方々、および関係諸団体の方々のご協力をお願い致します。


巻頭言 Vol.48 No.2 2012 年度末に思う事

2012/03/10(土)

安房医師会専務理事 小嶋 良宏

 平成23年度もいよいよ終盤に近づきつつあり、この3月の総会では理事の改選がおこなわれることとなっている。4月からは新理事を迎え、新たな理事会活動を行っていく訳であるが、新年度に引き継いでいくいくつかの懸案事項について記してみたい。
 はじめに、1月24日の臨時総会で可決された旧医師会病院、旧看護学校の土地の件である。宮川会長、堀税理士のご尽力により、セブンイレブン関連会社に売却することとなった。やっと売却先が決まり、遊休財産の処分ができるとほっと胸をなででいるが、その売却金額の全額が医師会に入金となる訳ではなく、医師会側が旧病院、旧看護学校の撤去費用、残置物処理費、付帯工事費、また、各種の手続き費用をも負担することとなっている。会員からあずかっている大事な資金を我々理事会は守る必要があるため、医師会負担額が売却金額より増えてしまうことは厳につつしむ必要がある。今後は、交渉の窓口である堀税理士と密に連絡をとり、予定外の出費を負担すること無く売却金額内で撤去工事などを終え、期日内に無事セブンイレブン関連会社に引き渡せるよう、気を引き締めて活動していきたい。旧看護学校土地の売却に伴い、医師会事務局も移転を余儀なくされる。以前より耐震診断で問題ありとされた建物に事務局をおくことは忍びなく、もし、地震があり建物が損壊した場合、事務員の生命にかかわることなので早急に移転したいと考えていた。新しい移転先も見つかり安堵しているが、間借りであるため終の住処とはならないであろう。私見ではあるが、新年度早々には恒久的な医師会事務局を念頭に、場所、建物の規模や資金面を考える検討委員会を立ち上げたいと考えている。
 平成25年11月の公益法人改革に向け、去年12月の臨時総会で可決された新定款をもとに、堀税理士と司法書士により県に定款を提出、平成25年3月31日までには、許認可を受けたいと考えている。一昨年の県による医師会監査時には、公益法人を取得するに大きな問題は無いとのコメントを頂戴した。公益法人取得には総収入に対し公益目的事業比率が50%以上という規制が存在する。現医師会の収入は会員からの会費に頼っているのが現状である。新塩場の医師会の土地を整備し、賃貸駐車場としているがその収入はわずかである。会費収入、駐車場賃貸収入と総合健診に伴う経費を合算すれば、法律の規定にある事業比率が50%以上という規制をクリアーしているので、公益法人取得は可能であると考える。また、旧医師会病院、旧看護学校の土地を売却することとなり、その結果遊休財産が減り、公益法人取得にさらに有利な条件となった。今後、医師会の将来を見据え、また公益法人として幅広く医師会活動を財源の不安無く安心して実施していくために、新たな収入源を確保しなくてはならないかもしれない。引き続き公益法人取得という目標に向かい、関係機関、税理士、司法書士と協議し、実現させたいと考えている。いよいよ4月からあたらしい総合健診システムが開始される。24年度からは、市町村と実施医療機関である安房地域医療センターとの直接契約となる。医療センターには、優秀な健診スタッフが多数勤務しており、その実施には何の不安もないし、また、数多くの医師会会員も今まで通り理学的健診に協力することとなっている。再三述べているが、医師会は総合健診全般から手を引くわけではなく、種々の問題が生じたときには協力をおしまない体制にある。この2月には、各種健診委員会がひらかれ、種々の問題提起がなされた。新年度からも行政、実施医療機関、医師会で協議する場をもうけ、住民の健康維持のため、実施医療機関として施行しやすい健診方法、医師会や研究者にとって有意義な健診となるよう活動していきたい。その他の検討課題として、広報関連では、理事会活動を医師会ニュース以外に会員へ周知する新たな情報開示方法の検討、医師会ニュースの巻頭言の執筆者の拡大、会員からの投稿記事の募集。学術関連では、講演会の演者を外からの招聘ではなく、医師会会員から募集し、各分野での勉強会の開催などを考えている。
終わりに、医師会および理事会は、何のために存在し、何のために活動しているのか、会員の皆様と一緒に考え、一緒に行動していきたい。さらなる会員のご協力を。