巻頭言

公益社団法人 安房医師会

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巻頭言 Vol.47 No.3 2011

2011/05/10(火)

安房医師会理事 小嶋 良宏

 このたびの震災により、被災された皆様、その御家族の方々に心よりお見舞い申し上げるとともに、犠牲になられた方々とご遺族の皆様に対して、深くお悔やみを申し上げます。
 震災後数日たったある日の外来、「今日、おれは先生の顔を見る事ができて、涙が出るわ。目が見えるように治してもらったおかげで娘に連絡を取る事ができたんだ。」聞けば、東北地方に嫁いでる娘と、震災後3日間連絡が取れず、大変心配していたそうだ。やっと連絡が取れ、無事の知らせを聞いたときの彼の安堵と喜びは書くまでもないであろう。
 震災直後より、被災者の為に自分には何かできるであろうか考えていた。現地に出向いての直接支援、衣料品や食料品などの救援物資、義援金といった間接的支援?ありとあらゆる事が頭の中をよぎった。
 大津波警報が発令された海岸近くに居りながらも、幸いにも直接被害を受けずに済んだ眼科医としての私には何が?専門分野によって支援の方法に違いがあるのは当然の事である。法医学に携わる物はその分野、外科、救急医学、内科、精神医学、在宅医療、各専門分野により支援方法は多岐にわたる。私の専門分野では直接の支援はできないとなかばあきらめていたが、先の患者さんとの会話を通して思いを新たにした。今この地にあっても、病気を抱え日々の暮らしに支障をきたしている目の前の人々の健康の回復に尽力し、社会生活に復帰する事の手助けをする事が、間接的に被災者支援、しいては復興につながるのだと。

「水と安全はただである」
 数十年前、イザヤベンダサン氏が「日本人とユダヤ人」という本で書いた一文である。多くの人々の意識下にままある価値観を表す象徴的な言葉であった。蛇口をひねればきれいな水が出てくるのに慣れてしまっている今、レストランに行けばまっさきに水がダダで提供されるのは日本だけであり、またそれをあたりまえだと思っていた。今回の大震災では、今なお断水世帯が20数万件あり、想像を絶する不自由な生活を強いられている。さらに追い討ちをかけて原発事故による水道水の汚染が起きてしまった。その結果、各地で店頭にペットボトル入りの水が無くなってしまった現状は言うまでもない。
 発電不足による度重なる停電が起き、節電のCMが流れ、この夏の電力不足対策が声高らかにちまたに流れている。統計によると日本の電力消費量はアメリカ、中国に次いで世界で3番目に多いということだ。我が身を省みると、今まで必要以上に電気を浪費してきた。
 スイッチを入れれば家の照明が付き、街灯がついた明るい退を歩き、満艦飾のネオンに心が浮き立つ。 そのような生活を普通だと思ってきた。
 真冬なのに半袖で過ごせるくらい暖かい室内。思わずセーターをきたくなるような冷房の効いた部屋。使わない部屋なのに点灯している照明。 PCはつけっぱなし。自責の念に駆られる。節約とケチは違うという言葉を、幼少時良く母にいわれていたのを思い出す今日この頃。必要ならば使う、必要無ければ使わない。 Mottainaiというロゴをごぞんじであろうか?もともとは、ゴミ削減、再利用、再資源化に資源への尊敬がこめられている言葉である。
 今回の震災で、安全も水もただでないと言う事を体験し、学んだ。気がついた事は沢山ある。これを契機に、今あるものへの感謝を忘れず、多少の事は我慢し、多くの資源の節約をしようではないか。
 国家には97兆円という巨額となってしまった予算の中から無駄を省き、より多く復興費用を捻出することを考えていただく事を切望する。
 自らは、自分ができる身近なところからの支援への取り組みに尽力したい。 一日でも早い復興を、祈るばかりである。


巻頭言 Vol.47 No.2 2011

2011/03/10(木)

総合健診のこれからについて

安房医師会会長 間宮 聰

 総合検診の実施主体であった安房医師会病院を太陽会に委譲してから3年が経ち、これからの総合検診のあり方について検討する必要があるとの意見から、地域医療担当の青柳和美理事、小嶋良宏医師会専務理事、そして副会長の間宮で3市1町の実務者との会議を重ねた。
その結果、総合検診の受診者の7割以上が高血圧症、高脂血症、糖尿病などで、かかりつけ医に通院していて無駄が多いこと、市町村合併後は検診会場が集約されたため、受診者の利便性が悪くなったこと、平成20年から特定健診制度が開始され、検診の内容が簡素化されたこと、受診率を65%以上にするよう指導されているが、現在は30数%であり受診率が低いこと、受診率が低いとペナルティーとして後期医療への拠出金が課せられる可能性のあること、総合検診のみでは今後の受診率の増加は見込めないなどの問題が出された。
 以前から、総合検診の意義は少なく見直すべきであるとの指摘を会員からいただいてはいたが、この総合検診をすることにより安房医師会病院の経営赤字の補填のために続けられてきた。会員からの貴重なご意見に耳を傾けずに申し訳なかったと反省している。これらの問題をふまえて「今後の総合検診のあり方について」を検討するために、宮川会長の諮問により総合検診検討委員会が立ち上げられ、清川恒委員長のもとで検討を行った。
 その結果「現在の特定健康診査制度のもとでは、安房医師会が検診主体となるべき医療機関を持たないことから、総合検診事業に関する契約を解くことになり、今後の総合検診は保険者(市町村)と検診事業者との直接契約に委ね、平成24年度からは安房医師会は保険者との契約はしない」こととなった。
 今後は保険者である市町村が検診事業者を選定し、検診事業者と直接契約し、総合検診を進めていくことになる。安房医師会が会員に義務として協力いただいた総合検診の理学的診査については、今年度かぎりで平成24年度からなくなる。検診事業者から、もし理学的診査の協力依頼があれば賛同する医療機関が検診事業者との個別の契約を行い協力することになるものと思われる。また、保険者(市町村)が検診受診率を上げるために個別(施設)検診の導入を強く希望しているので、医師会として協力していくべきではないかと個人的には考える。
 がん検診(喉頭がん、肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、前立腺がん)などの検診の体制も保険者(市町村)、医師会、検診事業者の間で十分協議して一つ一つ見直さねばならない。検診事業者から報告されたデータを保険者がまとめ、それに対して保険者から医師会が意見を求められれば、地域医療の一端を担うわれわれ医師会はこれに応えていくべきであろう。平成24年度からの特定健診、がん検診の体制を確立するために、これから1年が大切な時間となる。


巻頭言 Vol.47 No.1 2011

2011/01/10(月)

年頭にあたり

安房医師会会長 宮川 準

 この4月で、安房医師会病院を太陽会に移譲し、安房地域医療センターとしてrestartしてから3年が経過する。当初1年は混乱を回避するために医師会病院の業務を改変することなく継続することが、太陽会と安房医師会の間で合意された。
 昨年から徐々にではあるが医師会病院を失った影響が出来してきている。  医師会事務局は昨年4月から旧安房看護専門学校跡地に移転。その名称を安房医師会館として業務にあたっている。理事会・全役員会は2階・3階の元の教室を使用している。2年間宙に浮いていた歴代会長の肖像写真を飾ることができたことは幸いであった。また、未使用の部屋は看護協会安房支部・安房歯科医師会・薬剤師会に声をかけ、有効利用していただいている。
 実施主体を失った総合検診に対して、その運営の在り方について検討する「総合検診検討委員会(清川恒委員長)」を2010年9月28日付けの会長諮問委員会として立ち上げ、討議を行った。 11月9日の答申書には「安房医師会が検診主体となるべき医療機関をもたないことから安房地域の市町村国保組合が行う総合検診事業に関し、その契約を解き、今後の総合検診は保険者と検診事業者との直接契約に委ね、総合検診事業に関する契約を解くべきである」とあり、その時期を「平成24年度から」としている。この答申を重く受け止め、この1年、保険者・太陽会・各医療機関・安房医師会会員と折衝を重ね、よりよい総合検診の構築に力を注いでいきたい。
 安房医師会の組織の在り方が問われている。対外的には極めて公益性の高い組織と認識している。今後公益法人を取得するか、一般法人で継続するか模索する年でもある。担当の小嶋専務理事には今年もご苦労をお掛けすることになる。
 安房医師会が取得している土地・建物の処分も喫緊の課題である。顧問税理士・弁護士の意見も参考に対応していきたい。
 上記のいずれもが、安房医師会病院を失った負の遺産によるものと重く受け止めている。移譲の責任者である私が会長職を留任した所以でもある。しかしながら両副会長・専務理事以下、精鋭の理事者・諸役員は一枚岩で対処する力・まとまりがあると確信している。本年も諸事多難ではあるが、安房地域住民の健康維持・安房地域の医療の向上を実践する主体として安房医師会の存在意義を確固たるものにする年と位置付けたい。
 「初日さす 鏡の湾に 舫う船」 如水明鏡止水、この1年も心穏やかに過ごしたいものと願っている。