巻頭言 Vol.50 No.2 2014
安房医師会専務理事 青柳 和美
弱冠30 歳のリケジョ・小保方先生が、STAP 細胞を発見し、マスコミで話題になっております。ヒト細胞でも同じ現象が起きれば、ノーベル賞も夢ではないと言われており、STAP 細胞作成の簡便さから、山中教授のiPS 細胞を凌ぐのではないかとも考えられております。
かく言う私も、昔(20 数年前)、ラット胎児組織を使った膵β細胞発生研究に携わっており、実はスウェーデン留学中に、STAP 細胞の存在を仮定していれば、今なら説明できたかもしれない奇異な現象を経験しております。勿論、能力のない私には、それを解決する術もなく(突き詰める面白さも理解できませんでした)、学会で発表はしましたが、誰にも相手にされず、論文にもしていません。もしかして、大発見の種はいつも我々の身近にあるのに、気づかずに通り過ぎているのでしょうね。
小保方先生のような、研究に対する熱意と根性です! iPS 細胞発見から、発生学の世界は驚くべき早さで、一段と躍進しております。
これからの治療医学は、現在の対症療法から根治治療に移行していくのかもしれません。我々診療所医師もそれに取り残されないように、勉強していかないと、50年後、医師会は、人気テレビドラマ(漫画)『JIN - 仁-』の幕藩体制から脱却できない御典医集団になってしまうのではと危惧するのは私だけでしょうか?医師会組織も、学問のみならず、同時に新たな医療改革に積極的に関わって行く体制作りが必要かと思われます。
さて、話は変わりますが、今回は、館山市が行なっている『ふるさと納税』について、ご紹介したいと思います。『館山市ふるさと納税』は、寄付金を使う事業がより具体的に示されている事が、これまでの他市町村で行なっている一般的なふるさと納税と違うところです。現在、指定事業は、『15.指定事業なし』を含め、15 項目となっておりますが、『14.コミュニティ医療推進に関する事業』にご寄付をいただければ、この寄付金に関しては、市健康課が『コミュニティ医療推進基金』として、直接管理するため、医師会としても、より行政と密接に、より具体的に市民健康を考えた地元住民に有益な事業を立ち上げる事ができるかと思います。これまで、行政サイドも新たな医療関連事業を立ち上げるためには、周到な準備が必要な事や、予算の制約等から、腰が重くなかなか動けなかったのも事実かもしれません。医師会員の皆様から寄付される『コミュニティ医療推進基金』が潤沢になれば、従来よりも円滑に、早く新事業を立ち上げられるものと期待しております。この新事業が、うまく機能・運営できれば、次年度には、本予算として計上して、市の大きな事業としてもらいましょう。これが、安房3 市1町全体の医療政策の向上にもつながる事と確信しております。
さらに、館山市在住の医師会員の皆様も、お納めいただいている市県民税の一部を『ふるさと納税』として館山市に寄付することも可能になっております。比較的納税額の多い会員にとっても、税金の使い道が分かる(自分の意志を反映できる)は、良い事ではないでしょうか? 勿論、会員が寄付された『コミュニティ医療推進基金』が、医師会の別の財布になるなどとは、呉々も、お考えなきようお願い申し上げます。悪くみると、『トンネル事業』『迂回献金』等とも誤解される可能性もありますが、館山市側とも協議を重ね、これらには当たらない事も確認した上で、安房医師会理事会では、『館山市ふるさと納税』を支援しようと決議いたしました。なお、納税額については、個々の会員でその寄付金額が変わってきますので、税理士等とご相談下さい。是非、『館山市ふるさと納税(寄付)のお願い』のパンフレットをお取り寄せいただき、会員の皆様のご協力を心よりお願い申し上げます。
将来的には、国税においても、納税額の数パーセントは、納税者が希望する政策に税金を使えるようなシステムを作ってくれると、進んで納税したいとの気持ちも芽生えてくるのではないでしょうか? 例えば、政府が20―30 項目くらいの大きな政策を提言し、それに対し、納税者が納税額の3−5%(新たな増税分)くらいは、希望政策に使えるように納税する。今マスコミは、各社莫大な経費を使いながら、『国民は何を望んでいるか?』なんていうアンケート調査をしていますが、そんな方法よりも、もっと直接的に国民の希望を反映するのではないかと考えます。こんな納税の仕方はどうでしょう? 喜んで納税する気持ちにはなりませんか?
最後に、現在、安房医師会は一部の会員から訴えられ、係争中です。新公益法人となり、これまで、ずっと解決できずにいた医師会入会金問題を解決するべく、前間宮会長、現小嶋会長が苦渋の決断をされた訳ですが、誠に残念な結果になってしまいました。最終的には、どう収まるのかは未定ですが、この小さな安房医師会の会員の皆様と、歪み合う事なく、仲良く、風通しのよい医師会になるように微力を尽くしたいと考えております。