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公益社団法人 安房医師会

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巻頭言 Vol.55 No.6 2019

2019/11/10(日)

巻 頭 言

安房医師会 理事 杉本雅樹

目下バタバタしています
台風15号の影響により、安房地域のみならず千葉県全体で多大なる被害を被りました。未だ復旧の目処の立たない地域があるかと思うと、心がいたたまれます。
台風直撃時の私は、仕事柄携帯の着信音とバイブレーションには敏感ですが、日頃の寝不足のためか全く気づくことがなく、目が覚めてはじめて事の重大さに気づきました。
我々のようなお産を扱う連中は、仕事と生活の境目が曖昧なため、家庭の心配よりも夜勤のスタッフ、入院の患者さん、これから産気づく妊婦さんのことで頭がいっぱいです。おまけに通信機器は使えず、周りの状況がわからないため、とにかく施設で待機し、来るべきお産に備えようということになりました。
半ばキャンプ生活を強いられている中、停電の間の3日間で2名の出産がありました。産ぶ声とともに、周りは歓喜の声で満たされて、大変思い出深いものとなりました。
みなさまも様々な体験とともに、今後の診療に大きな課題を残すことになったこと思います。安房医師会では、災害対策委員会を設置し、通信網の整備、ハザードマップの再確認、備蓄の準備...などなど、できるところから積極的に活動しています。そして、まだまだ続くであろう被災後の住民の健康被害に対し、真摯に対応していきます。
そして、我々が運営している産院群は、この体験を機に、より強固なネットワークを構築するために、あ~でもない、こうでもないとバタバタ試行錯誤しています。

 


巻頭言 Vol.55 No.5 2019

2019/09/10(火)

巻 頭 言

背水の陣

安房医師会 会長 原 徹

 この5月には年号が平成から令和に代わり、G20・国際会議を経て7月の参議院選挙も無事終了。我が国だけでなく地球全体が安寧な状態を保ち、人々の暮らしが平穏である様にと祈る每日です。翻って自分自身に目を向けると年齢は着実に増し、それに反比例する様に体力・種々の能力は低下、さらに目を周囲に向けると地域社会も元気を無くし、将来への不安だけが着実に増大しています。そんな状況下で多くの開業会員が悩んでいる問題の一つが事業の相続・継承の問題であるかと思います。法人・個人の差、規模の大小に拘わらず事業の継承責任を問われ、その方策に頭を痛めておられる方も少なくないと思います。現実には事業継承に必要な財の維持に配慮した相続が必要となり、単なる「平等」では済まされない状況に陥ります。
 ところで“馬鹿者”の事を「たわけ」と言うことがありますが、たわけ(=田分け)が語源とも考えられています。要は「相続する子供等の人数で田畑を分けると、孫・曾孫と代を受け継ぐ間に面積は減じ、結果として家は衰退してしまうこと」がその理由とされています。要は資産の分散は事業の継続を困難にしてしまうとの意味です。逆に「頼りになる」の「たより」の所以は「田寄り・田を寄せ合う」であるとも言われています。どうも自由や平等が尊重されると資産だけでなく責任も分散し、その結果、農業だけで無く様々な事業・産業も衰退してしまう危険を孕んでいるのでは?と危惧します。
 話は変わりますが「漁夫の利」は、「肉を食べられまいとする蛤と、貝に嘴を挟まれたシギが争っているところを通りがかった漁師が両者を難なく生け捕りにした」との故事に由来しています。また同様に「犬兎の争い」も足の早い犬と兎が共に倒れ、通りがかった農夫が獲物を独り占めしたことが語源とされています。家庭内の相続問題と同様に、地域内でも我々住民が小競り合いをせず、大切なものを協力して維持継承すること。それには外部からの圧力・干渉に屈せず、且つ滅私奉公の精神を持ち努力を惜しまない事が必要であると考えます。「人間万事 塞翁が馬」、幸(福)と思えることが、後になって不幸(禍)となることも、またその逆もあります。
 我々が住む安房地域は房総半島の南端部に位置し、地政学的にはまさに「背水の陣を敷かざるを得ない場所」に位置すると言えます。この地域から退けば海で溺れてしまう。そんな覚悟を持って将来を考え、地域が活性化することを期待しています。可能であれば「はやぶさ2」の様に大きな希望と計画を持ち、次の世代へ夢を語り継ぎたいものです。


巻頭言 Vol.55 No.4 2019

2019/07/10(水)

巻 頭 言

千夜一話

安房医師会 理事 野﨑益司

 高コレステロール血症治療薬としてスタチンが上市されてからすでに30年以上の歳月が経過した。その間、各所で数々の大規模臨床試験が実施され、その結果およびメタ解析から導き出されたのが“the lower, the better”である。LDLコレステロール(以下LDL-C)を下げれば下げるだけ動脈硬化に起因する脳心血管イベントを低下させることができるというのは、どうやら現時点において真実だと考えていいようである。では実臨床において、一体どこまでLDL-C値を下げるべきかという疑問(clinical question)に対しては、これまでのエビデンスをもとに諸外国の学会等で目標値が設定されている。いわゆる “Treat to target”という方式であるが、敢えてこう表現しなくても我々にとっては馴染みのある概念である。我が国では日本動脈硬化学会がリスク区分別管理目標としてLDL-Cの絶対値を設定しており、我々は専らこのガイドラインに準じて日常診療を行っている。しかし改めて考えてみると、この“the lower, the better”と“Treat to target”は本当に整合しているのであろうか。2014年に発表されたIMPROVE-ITはあくまでも二次予防を対象とした試験であるが、すでにLDL-Cが正常域=targetに到達している患者に対し、スタチン+エゼチミブでさらにLDL-Cを平均53.2mg/dlまで低下させることにより、急性冠症候群の再発を有意に防止することができたことを示している。この結果を直ちに一次予防に当てはめるのは無理だとしても、管理目標値をリスク区分別に設定するという、言わば薬剤安全性と医療経済(費用/効果)を配慮した穏やかなやり方よりも、多少なりとも心血管リスクを有するグループに対しては、一律にLDL-Cの目標値を70mg/dl以下とするというアイデアも強ち無謀とは言えないのではないだろうか。
 蛇足であるが、米国心臓協会/米国心臓病学会では二次予防における超高リスク患者を除き、他のカテゴリーにおいてはスタチン投与が前提となるものの、LDL-Cの管理目標値は敢えて設定しないという方針を取っている。この方式は“Fire and Forget(軍事用語!)”と称されており、勿論諸外国のみならず米国内においても批判的意見が多い。ましてや生真面目な(?)日本人にとって、この考え方を到底容認することはできないだろうが、“どこまで”下げるかよりも“どれだけ”下げるかを重視したこのスタンスは、むしろこれまでのエビデンスを正確に反映させたものかもしれない。ちなみにこれまでの日常診療においてはすでに何の違和感もなくこれを実践しているのであって、ワーファリンからDOACに変更(fire)した途端、我々はモニタリングを完全にforgottenしているのである。
 EBMを唱えられてから久しいが、clinical medicineという領域においては純粋科学以外に医療経済学という側面も考慮しなければならない。我々保険医にとって診療枠という“足かせ”が存在する以上、各種ガイドラインに則った診療が求められることは確かであるが、それらを十分認識した上で患者個人に即したいわゆるテーラメイド医療もこれからの時代に求められる姿であろう。そしてさらには、これらの情報をRWD(Real World Data)として蓄積していくことにより、より一層科学的根拠に基づいた医療サービスの提供ができるようになるのではないだろうか。


巻頭言 Vol.55 No.3 2019

2019/05/10(金)

巻 頭 言

安房地域保健医療連携・地域医療構想調整会議の今後について

安房医師会 専務理事 鈴木丹

 平成30年度は、第1回目は7月30日、第2回目は10月18日、第3回目は今年の3月6日に開催されました。
 特に 10月18日の 第2回目の 会議の中で突然、南房総市の石井裕市長から『南房総市・富山国保病院と社会福祉法人太陽会・安房地域医療センターの2法人が参加する新たな「地域医療連携法人」設立を予定している。』との発言があり議場は一時騒然となりました。
 賛否両論がありますが、今回の巻頭言の趣旨と方向性が異なると判断し私見を述べません。第3回目の3月6日の会議で予定議題の検討終了後に原 徹安房医師会長より安房郡(3市1町)では、看護師の人数は充足してきたが、介護施設の介護士の人数は 極端に不足しているとの発言がありました。3市長も現状を把握し少し考え込んでいましたが、南房総市の石井裕市長から「それなら、看護師不足の時に3市1町で補助金を出したように介護士になりたい人に補助金を出す仕組みを作ってはどうか。」との発言がありました。館山市の金丸謙一市長と鴨川市の亀田郁夫市長からも反対意見はありませんでした。この3回の安房地域保健医療連携・地域医療構想会議で反省すべき所と今後について考えたいとおもいます。

1、この会議は3市1町の市長と町長と担当部課長・安房保健所・安房医師会・歯科医師会・薬剤師会・各病院長・老人保健施設協会・高齢者福祉施設協会・看護協会安房地区部会・全国健康保険協会千葉支部・健康保険組合連合会千葉連合会に千葉県福祉政策課の方々が出席する 大きな会議です。

2、使い方によっては 非常に大きな力があるのですが、現状では国や県からの報告と都合の良いガス抜きになっているような気がします。

3、そこで、次回からは医師会・保健所・3市1町の部課長・各医療機関の有志が事前に検討会を開いて安房からの議題提出と議題の方向性を決めてから本会議に臨みたいです。

4、毎回傍聴席に来られる県会議員・市会議員・町会議員の方々に発言権があればと思いますし、意見も聞きたいです。

5、最後に、この会議が発展し県や国との堅実な連絡網となることを希望します。また、地域の医療と介護の質の向上を含めて地域の皆様に少しでもお役に立てる事を切に願います。


巻頭言 Vol.55 No.2 2019

2019/03/18(月)

巻 頭 言

― これからの医療・介護 ―

安房医師会 副会長 竹内信一

平成最後の年を迎え、健康保険高齢受給者証を目の前にしてボーッとしている自分の姿があります。あ~あ、年をとったなぁという感じです。人生100年時代到来と世間では叫ばれて、平均寿命は今後も伸びる傾向にあり、長寿化への備えが必要な時代に突入しているとも言えます。私も今年古希となり、老後のことが脳裏をよぎることがあります。働き方改革や定年制などといったことを考えると、やはり今後の健康面が一番気になっています。もちろん蓄えのことも気になりますが?健康のことを考えるとありふれたことではありますが、これからの医療や介護のことが切実な問題となってきます。その場合のキーワードは、自分なりに考えて2つあると思っています。

ひとつは医療面に関することで、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)です。それは、人生の締めくくりの時期に家族や医療・ケア関係者等が寄り添うこと-即ち将来の医療及びケアについて当事者を主体に、その家族や近しい人、医療・ケアチームが繰り返し話し合い、意志決定を支援するプロセス:アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を具体化することです。そのためには、当事者の意志が尊重された医療及びケアを提供することが重要で、この事は残された家族等にとっても極めて重要な意味を持つため、現在は「人生会議」の愛称に決定されています。そのため、今後はリビングウィルが益々重要な意味を持つと私は考えています。

もう一つは介護に関することで、フランスの高齢者ケア技術「ユマニチュード」です。ユマニチュードは「人間らしさを取り戻す」という意味のフランス語の造語です。ユマニチュードの哲学では、ケアをする時に「人とは何だろう」と考え続け、最終的に「人は、そこに一緒にいる誰かに『あなたは人間ですよ』と認められることによって、人として存在することができる」と定義しました。その結果、認知症を含めた介護の場面では、この視点から「見る」、「話す」、「触れる」、「立つ」が大切となってくるのです。

これからの医療・介護の世界では、相手は人間の尊厳を持った存在であることを忘れずに接することが大切と肝に銘じて、もうしばらく医療の仕事に携わっていきたいと思います。


巻頭言 Vol.55 No.1 2019

2019/01/10(木)

巻 頭 言

安房の方向性と医師会活動

安房医師会 会長 原  徹

公益社団法人・安房医師会の会員数は本年11月末の時点で270人を数えます。これは安房医療圏で働く医師総数の6割程になります。その内訳は「開業医師」であるA会員が83名、「勤務医師」であるB会員が187名、また同時に千葉県医師会、日本医師会に入会している医師数は230名となります。ところで千葉県内で活躍されている医師数は1万2千人を上回りますが、県下22の地区医師会と千葉大学医師会、千葉県下国立病院医師会、千葉県庁医師会を加えた県医師会・総会員数は4,842人であり、千葉県で働く医師総数の半分以下となります。全国レベルでも医師の総数が30万強、日本医師会員数は今年初めて17万人を超えた状況です。ところで県医師会は代議員制度を採っており、各地区医師会の県医師会・会員数に比例して地区から選ばれる代議員数は決まります。その結果、現在の千葉県医師会・代議員133名の中で安房医師会から選出されている代議員は6名となります。一方千葉県の医療圏の数は地区医師会数とは異なり9圏域に分けられており、その一つである安房医療圏のすべてを安房医師会が担う形となっています。そしてこの圏域には現在千葉県の人口の2.1%にあたる約13万2千人が生活しています。すなわち安房医師会は職域団体として当医療圏の特徴や問題点を掌握し、市町や県に意見を述べ、保健福祉行政だけでなく災害対策や教育行政等の幅広い公的事業にも協力する責務を負っている事になります。

ここで安房医師会の特徴として挙げられるのは前述の様に勤務医会員数が開業医会員数を大きく上回っている事です。そして県内の22地区医師会では唯一、勤務医会員数が過半数を占めている地区医師会組織でもあります。さらに現任の理事15名の中で6名が病院勤務の医師で構成されています。この事実は非常に特徴的なものであり、当医師会が所謂「開業医」で組織された組織では無く、地域で働く多くの医師を包括した組織であるとも言えます。また一般社団ではなく公益社団法人の資格を持つ地区医師会は県内では習志野市医師会と印旛市郡医師会と安房医師会の3組織のみであり、その意味でも公的な働きを担う組織であると自負しています。

さて平成の時代はその幕を降ろす準備が粛々と進められています。振り返れば改革に次ぐ改革の連続で競争、評価、合理化そして透明化の嵐が吹き抜けて行きました。平成の30年間で日本固有の文化の一部が失われ、国民の倫理観、行動規範までもが大きく変わってしまった様です。これで果たして国民は幸せになったと言えるのでしょうか?振り返って見れば終身雇用や年功序列は確かに非合理的な部分も多く、所謂グローバリズムには適さないものですが「組織内の連携や協調を保つには極めて有効」であったと思います。地域住民が安心して暮らすには日頃からの相互理解と合意、さらにそれらに基づく協力が必須であると思います。ところが平成の改革では外部からの評価を常に意識し、数値上の結果をだすことに価値を置き、競争を続け、それに付随して他者への批判を行い、その結果人間関係が悪化、さらには格差の増大が生じたのではないでしょうか?少子高齢化、人口減少の中で国が推進している地域包括ケアーの構想もこれでは実現困難になるのでは?と強く案じています。翻って安房医療圏の行政は未だに3市1町に分かれた体制が続いています。然し既に健康福祉分野では3市1町の連携が活発になっています。行政が自ら連携推進を掲げ安房地域が一体となり子供から高齢者まで共に手を取り合い生活できる社会が実現できないか?その一助を安房医師会が担うことができないか?今年は館山市が千葉県内で5番目に市になってから80年の節目となりますが、前述の様な目標を持ち、今年も医師会活動を行いたく思っています。医師会組織では出身地、出身大学、専門領域も様々であり、さらに勤務医師と開業医師の立場も異なり、相互理解・協調・連携を無くしては当医療圏の医療を支えることは最早不可能な状況です。この安房の地域から千葉県全体に新たな医師会組織の流れ、そして新たな安房のあり方が生まれる事を願っています。


巻頭言 Vol.54 No.6 2018

2018/11/11(日)

巻 頭 言

安房医師会 副会長 清川 恒

定 年 制

高齢化社会が進行中の今、生涯現役を貫くお年寄りが増えている。

高齢者が多くみられる職業は 農・林・漁業が一番多く次いで宗教家、弁護士、税理・計理士、医師が多い。2017年の平均寿命は女性:87.2歳、男性:81.9歳。一方健康寿命は女性:74.79歳、男性:72.14歳、元気なお年寄りが社会の第一線で活躍している。

高齢化社会を見据えて政府は公務員の定年を 60歳から65歳に延長する方針、一般企業も定年制度そのものを廃止しようとする所もあるようだ。

何歳まで働きたいかのアンケートでは、一番多かったのは60歳迄、次いで65歳迄、そして70歳迄と続く。70歳まで働きたい理由は ①高齢でも働ける以上は社会貢献したい。②体力的に問題がなく知識や経験が社会に役立つ。③経済的に働く必要が有る。となっていた。ある機関の将来人口推計によると、2025年に70歳以上の人口に占める割合は24.5%(およそ4人に1人)、75歳以上の割合は5.5人に1人。2050年には70歳以上が3人に1人。

生涯現役はじぶんにとっては目標であるが、それを取り巻く周囲の目はどうだろう。口に出して言わないが「老害」と感じる人が多いのでは無かろうか。105歳で亡くなられた日野原重明先生は生涯現役を貫き、各方面から称賛の声が上がっていたが、その反面一部からは老害批判も有ったようだ。

年寄りになるほど 頑固 我儘 怒り易い 無頓着等周囲の評判は悪くなって来る。開業医には定年が無く体力・気力が有れば生涯現役は可能だ。しかし老害を振りまく可能性も多くなる。

老害の困るところは 本人にその自覚が無い所である。私事だが来年1月に喜寿を迎えるが、後進に道を譲るべきなのに未だ医師会理事を務めている。医師会の役職以外にも行政からの委嘱事業に関する仕事も数多く有る。介護・在宅・福祉関連・学校保健・産業保健・健康診断等。

老害を撒き散らさない為にも、そして後進に道を譲る為にも、医師会関連の役職に定年制の導入を検討して欲しい。70歳又は75歳定年。どうだろうか?


巻頭言 Vol.54 No.5 2018

2018/09/10(月)

巻 頭 言

安房医師会 会長 原  徹

6月の定期総会で安房医師会の代表理事に選任された原です。私の日課は早朝の愛犬との散歩で始まり、帰宅後は楽器(cello)の練習を繰り返しています。残念ながら犬はなかなか言うことを聞かず、celloの腕前も伸び悩みの毎日です。そして『一人で出来る事には限界がある』と実感する毎日です。

ところで先日『ベルリンフィル12人のチェリストたち』のコンサートに出掛けましたが、ソロの演奏と違い同じ楽器12本が奏でる美しい音色を聴きながら医師会理事会も素敵な連携が構築できないかと考えました。会長職は実際には公益法人の理事15名の中から互選し、理事の代表者として選任されたものです。すなわちアンサンブルでのコンサートマスターに似た立場です。そしてその仕事は独善的な親分の生業では無く、謂わば調整役としての任務であるとも言えます。個々の理事には素晴らしい才能があり、それをどの様に生かして行くかが問われる事になります。また一方では医療・介護・福祉に対する会員個々の思いもあり、実際には“会員個々の思い”を抽出・整理し、担当理事との合意を経て“組織の意見”として具現化して行く事が私に課せられた責務であると考えています。さらに公益法人の最高意志決定機関はあくまでも“総会”であり、その承認を得た上で全ての理事会の会務は行われることが基本原則となります。また2名の監事による監査・承認も必須となります。そしてこれら全ての課程を経て公益法人としての姿勢・方向性が決まると考えます。翻って現実の社会では安房地域も深刻な問題を多々抱え、地域の在り方自体が問われている状態です。すでに安房医師会は3市1町を内包した組織構成となっていますが、地域内の行政単位毎に施策も異なり、『総意としての地域の方向性が今ひとつ明確でない』ことも否めない現実です。これまでの歴史を振り返っても行政単位・体制は変化しても『地域に於る医療と教育の必要性は変わっていない』と感じています。そして地域に住むことが可能となるための『安全保障の基盤、社会の共通資本』として『医療供給体制や教育設備・制度』はあるべきかと考えています。しかし一方でこれら公的な医療・教育に係る財政負担は甚大なものでもあリ、地域住民の御理解・御協力が必須となります。勿論採算性は非常に重要なもので安房地域の財政が厳しい現実を無視する事はできません。しかし計算のみで安房地域の将来を論ずる事には違和感を覚えることも事実です。将来の安房地域を『社会基盤となる医療・教育の面から再構築する事が重要である』と考えます。そのためには積極的な教育を行い有能な人材を育てることが必須であると考えます。幸い安房医師会には優秀な理事が集まり、さらに小嶋良宏・前安房医師会長が千葉県医師会理事に就任された事により、県・県医師会との風通しも今まで以上に良くなることが期待されます。そして私の任期中に地域に在り方を踏まえた地域医療構想が活発に議論され素敵なハーモニーが奏でられる事を目標として尽力致します。


巻頭言 Vol.54 No.4 2018

2018/07/10(火)

巻 頭 言

安房医師会理事 岡田唯男

2年に一回の安房医師会の理事改選が行われリーダーシップ及び運営体制が一新しました。

一部の入れ替わりはあるものの、多くのメンバーが続投で、これまでなされてきたこともきちんと引き継がれることが期待されつつ、新しい風も入り、丁度良い程度の新陳代謝ではないかと感じています。

正直なところ、医師会の理事に入れて頂く前は、医師会に対してはなんだか胡散臭い開業医の集団ではないか、と感じていましたが、中に入ったところこれは全くの誤解で、いわゆる食わず嫌い、内実を知ろうともせず、勝手に決め付けてしまっていたということで反省をしております。しかしながら、医師会の運営に関わったことのない会員にとってはおそらく、私が例外ではなく、医師会の活動ができるだけ、会員の皆様にわかるようにすること、理事でない会員の皆様にも、関われる、関わって頂ける機会や窓口をできるだけ多く用意すること、いわゆる会員の皆様の当事者意識の向上が極めて重要と感じております。

他の医師会は分かりませんが、安房医師会の理事の面々は極めて誠実にこの地域のことを考えて医師会の運営活動を行っております。ただ、「よそ者、若者、馬鹿者(世の中や組織を変えるのはこの三者と言われています)」の立場から見ていると、様々な決定をする動機、目的は善意に満ちたものであるけれど、根拠が時として、サイエンスに基づいていなかったり、世の中のスタンダードからそれていたり、最初は正当な理由があったかもしれないけれど時代が変わってその正統性を失ったローカルルールを/オールドルールをただ踏襲しているだけだったり、個人の経験談に基づいていたり、ということが時々見られるように思えます。もちろん、長年の経験や土地勘といったものが極めて価値を持つこともしばしばではありますが、世の中の流れとスタンダードとは何かを常に見据えつつ、南関東の田舎のお殿様にならないよう、よそ者、若者、馬鹿者の精神を失わずに医師会活動に関わり続けていきたいと思います。また、批判のための批判ではなく、愛情のある建設的な批判はぜひ会員の皆様からも遠慮なくいただけることが、医師会が健全な組織であるためには重要と思います。

限界自治体というのは、65歳以上の高齢者が人口の50パーセントを超え、税収入の低下と高齢者医療、高齢者福祉の負担増で財政の維持が困難になった自治体の事を指します。国立社会保障・人口問題研究所が2012年に公開した日本の将来推定人口によると、2040年に千葉県で限界自治体となるのは6つあり、そのうち2つが安房地区に存在します(鋸南町、南房総市)。人が住み続けることができるために必要なインフラは買い物、電気、上下水道など様々なものがありますが、医療は絶対にはずすことのできないインフラです。これは、高齢者だけではなく、若い子育て世代にとっても、同等、もしくはそれ以上の重要性を持ちます。医療提供体制を安定させるということは、医療の担保だけでなく、人がその地域に住み続けられるかどうかの根本的な要素を担保することになるのだという自覚を再確認して、皆様の活動の支えとしていただければと思います。


巻頭言 Vol.54 No.3 2018

2018/05/10(木)

巻 頭 言

安房医師会理事 小田常人

 4月より6年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定が施行されました。今回の改定は団塊の世代が75才になる2025年とそれ以降の社会経済の変化への対応に向けた道筋を示す、実質的に最後の改定となる重要な節目だと言えます。

 まず改定率に関しては、診療報酬本体部分が0.55%引き上げられた一方で、薬価の大幅な引き下げにより全体としては1.19%のマイナス改定となり、この傾向は今後も続くことが予想されます。重点課題としては、地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進が示されており、関連する様々な項目が見直されました。外来医療の機能分化とかかりつけ医機能の推進を目的に、紹介状なしの大病院受診時の定額負担の対象範囲の拡大、「地域包括診療科・加算」、「認知症地域包括診療科・加算」がそれぞれ2段階となり、その医師配置に関する要件が緩和されています。

 在宅医療についても評価が見直され、算定項目が新設されました。他の医療機関から訪問診療の依頼を受けた複数の医療機関が評価の対象になる、「在宅患者訪問診療科Ⅰ.2」が新設され、様々な病気を同時に罹患している患者が、専門の他の病院を受診したい場合なども連携が容易になります。また、在宅療養支援診療所以外の診療所が、他の医療機関と連携し、24時間の往診体制及び連絡体制を構築した場合に加算される「継続診療科加算」が新設されました。これによって、在宅医療に従事する医師の負担が軽減されるとも考えられます。さらに、要介護2以上、認知症高齢者の日常生活自立度でランクⅡb以上の患者など、状態に応じたきめ細やかな訪問診療に対し加算される「包括支援加算」も新設されます。これまで、在宅医療に対する、診療報酬上の評価があまり十分ではありませんでした。そのため、高いニーズにもかかわらず、在宅医療を行う診療所はそれほど多くはありませんでした。今回の改定で、評価が見直され、新規参入が進むことが期待されます。

 安房地域でも、地域包括ケアシステムの構築にむけて、医師会、行政が中心となって議論が行われています。今回の診療報酬改定により、在宅医療を積極的に行う診療所が増えることにより、病院、施設、との連携もスムーズとなり、より良いシステムができると思われます。私も微力ながら、協力していきたいです。