巻頭言

公益社団法人 安房医師会

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巻頭言 Vol.55 No.2 2019

2019/03/18(月)

巻 頭 言

― これからの医療・介護 ―

安房医師会 副会長 竹内信一

平成最後の年を迎え、健康保険高齢受給者証を目の前にしてボーッとしている自分の姿があります。あ~あ、年をとったなぁという感じです。人生100年時代到来と世間では叫ばれて、平均寿命は今後も伸びる傾向にあり、長寿化への備えが必要な時代に突入しているとも言えます。私も今年古希となり、老後のことが脳裏をよぎることがあります。働き方改革や定年制などといったことを考えると、やはり今後の健康面が一番気になっています。もちろん蓄えのことも気になりますが?健康のことを考えるとありふれたことではありますが、これからの医療や介護のことが切実な問題となってきます。その場合のキーワードは、自分なりに考えて2つあると思っています。

ひとつは医療面に関することで、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)です。それは、人生の締めくくりの時期に家族や医療・ケア関係者等が寄り添うこと-即ち将来の医療及びケアについて当事者を主体に、その家族や近しい人、医療・ケアチームが繰り返し話し合い、意志決定を支援するプロセス:アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を具体化することです。そのためには、当事者の意志が尊重された医療及びケアを提供することが重要で、この事は残された家族等にとっても極めて重要な意味を持つため、現在は「人生会議」の愛称に決定されています。そのため、今後はリビングウィルが益々重要な意味を持つと私は考えています。

もう一つは介護に関することで、フランスの高齢者ケア技術「ユマニチュード」です。ユマニチュードは「人間らしさを取り戻す」という意味のフランス語の造語です。ユマニチュードの哲学では、ケアをする時に「人とは何だろう」と考え続け、最終的に「人は、そこに一緒にいる誰かに『あなたは人間ですよ』と認められることによって、人として存在することができる」と定義しました。その結果、認知症を含めた介護の場面では、この視点から「見る」、「話す」、「触れる」、「立つ」が大切となってくるのです。

これからの医療・介護の世界では、相手は人間の尊厳を持った存在であることを忘れずに接することが大切と肝に銘じて、もうしばらく医療の仕事に携わっていきたいと思います。


巻頭言 Vol.55 No.1 2019

2019/03/18(月)

巻 頭 言

安房の方向性と医師会活動

安房医師会 会長 原  徹

公益社団法人・安房医師会の会員数は本年11月末の時点で270人を数えます。これは安房医療圏で働く医師総数の6割程になります。その内訳は「開業医師」であるA会員が83名、「勤務医師」であるB会員が187名、また同時に千葉県医師会、日本医師会に入会している医師数は230名となります。ところで千葉県内で活躍されている医師数は1万2千人を上回りますが、県下22の地区医師会と千葉大学医師会、千葉県下国立病院医師会、千葉県庁医師会を加えた県医師会・総会員数は4,842人であり、千葉県で働く医師総数の半分以下となります。全国レベルでも医師の総数が30万強、日本医師会員数は今年初めて17万人を超えた状況です。ところで県医師会は代議員制度を採っており、各地区医師会の県医師会・会員数に比例して地区から選ばれる代議員数は決まります。その結果、現在の千葉県医師会・代議員133名の中で安房医師会から選出されている代議員は6名となります。一方千葉県の医療圏の数は地区医師会数とは異なり9圏域に分けられており、その一つである安房医療圏のすべてを安房医師会が担う形となっています。そしてこの圏域には現在千葉県の人口の2.1%にあたる約13万2千人が生活しています。すなわち安房医師会は職域団体として当医療圏の特徴や問題点を掌握し、市町や県に意見を述べ、保健福祉行政だけでなく災害対策や教育行政等の幅広い公的事業にも協力する責務を負っている事になります。

ここで安房医師会の特徴として挙げられるのは前述の様に勤務医会員数が開業医会員数を大きく上回っている事です。そして県内の22地区医師会では唯一、勤務医会員数が過半数を占めている地区医師会組織でもあります。さらに現任の理事15名の中で6名が病院勤務の医師で構成されています。この事実は非常に特徴的なものであり、当医師会が所謂「開業医」で組織された組織では無く、地域で働く多くの医師を包括した組織であるとも言えます。また一般社団ではなく公益社団法人の資格を持つ地区医師会は県内では習志野市医師会と印旛市郡医師会と安房医師会の3組織のみであり、その意味でも公的な働きを担う組織であると自負しています。

さて平成の時代はその幕を降ろす準備が粛々と進められています。振り返れば改革に次ぐ改革の連続で競争、評価、合理化そして透明化の嵐が吹き抜けて行きました。平成の30年間で日本固有の文化の一部が失われ、国民の倫理観、行動規範までもが大きく変わってしまった様です。これで果たして国民は幸せになったと言えるのでしょうか?振り返って見れば終身雇用や年功序列は確かに非合理的な部分も多く、所謂グローバリズムには適さないものですが「組織内の連携や協調を保つには極めて有効」であったと思います。地域住民が安心して暮らすには日頃からの相互理解と合意、さらにそれらに基づく協力が必須であると思います。ところが平成の改革では外部からの評価を常に意識し、数値上の結果をだすことに価値を置き、競争を続け、それに付随して他者への批判を行い、その結果人間関係が悪化、さらには格差の増大が生じたのではないでしょうか?少子高齢化、人口減少の中で国が推進している地域包括ケアーの構想もこれでは実現困難になるのでは?と強く案じています。翻って安房医療圏の行政は未だに3市1町に分かれた体制が続いています。然し既に健康福祉分野では3市1町の連携が活発になっています。行政が自ら連携推進を掲げ安房地域が一体となり子供から高齢者まで共に手を取り合い生活できる社会が実現できないか?その一助を安房医師会が担うことができないか?今年は館山市が千葉県内で5番目に市になってから80年の節目となりますが、前述の様な目標を持ち、今年も医師会活動を行いたく思っています。医師会組織では出身地、出身大学、専門領域も様々であり、さらに勤務医師と開業医師の立場も異なり、相互理解・協調・連携を無くしては当医療圏の医療を支えることは最早不可能な状況です。この安房の地域から千葉県全体に新たな医師会組織の流れ、そして新たな安房のあり方が生まれる事を願っています。


巻頭言 Vol.54 No.6 2018

2018/11/11(日)

巻 頭 言

安房医師会 副会長 清川 恒

定 年 制

高齢化社会が進行中の今、生涯現役を貫くお年寄りが増えている。

高齢者が多くみられる職業は 農・林・漁業が一番多く次いで宗教家、弁護士、税理・計理士、医師が多い。2017年の平均寿命は女性:87.2歳、男性:81.9歳。一方健康寿命は女性:74.79歳、男性:72.14歳、元気なお年寄りが社会の第一線で活躍している。

高齢化社会を見据えて政府は公務員の定年を 60歳から65歳に延長する方針、一般企業も定年制度そのものを廃止しようとする所もあるようだ。

何歳まで働きたいかのアンケートでは、一番多かったのは60歳迄、次いで65歳迄、そして70歳迄と続く。70歳まで働きたい理由は ①高齢でも働ける以上は社会貢献したい。②体力的に問題がなく知識や経験が社会に役立つ。③経済的に働く必要が有る。となっていた。ある機関の将来人口推計によると、2025年に70歳以上の人口に占める割合は24.5%(およそ4人に1人)、75歳以上の割合は5.5人に1人。2050年には70歳以上が3人に1人。

生涯現役はじぶんにとっては目標であるが、それを取り巻く周囲の目はどうだろう。口に出して言わないが「老害」と感じる人が多いのでは無かろうか。105歳で亡くなられた日野原重明先生は生涯現役を貫き、各方面から称賛の声が上がっていたが、その反面一部からは老害批判も有ったようだ。

年寄りになるほど 頑固 我儘 怒り易い 無頓着等周囲の評判は悪くなって来る。開業医には定年が無く体力・気力が有れば生涯現役は可能だ。しかし老害を振りまく可能性も多くなる。

老害の困るところは 本人にその自覚が無い所である。私事だが来年1月に喜寿を迎えるが、後進に道を譲るべきなのに未だ医師会理事を務めている。医師会の役職以外にも行政からの委嘱事業に関する仕事も数多く有る。介護・在宅・福祉関連・学校保健・産業保健・健康診断等。

老害を撒き散らさない為にも、そして後進に道を譲る為にも、医師会関連の役職に定年制の導入を検討して欲しい。70歳又は75歳定年。どうだろうか?


巻頭言 Vol.54 No.5 2018

2018/09/10(月)

巻 頭 言

安房医師会 会長 原  徹

6月の定期総会で安房医師会の代表理事に選任された原です。私の日課は早朝の愛犬との散歩で始まり、帰宅後は楽器(cello)の練習を繰り返しています。残念ながら犬はなかなか言うことを聞かず、celloの腕前も伸び悩みの毎日です。そして『一人で出来る事には限界がある』と実感する毎日です。

ところで先日『ベルリンフィル12人のチェリストたち』のコンサートに出掛けましたが、ソロの演奏と違い同じ楽器12本が奏でる美しい音色を聴きながら医師会理事会も素敵な連携が構築できないかと考えました。会長職は実際には公益法人の理事15名の中から互選し、理事の代表者として選任されたものです。すなわちアンサンブルでのコンサートマスターに似た立場です。そしてその仕事は独善的な親分の生業では無く、謂わば調整役としての任務であるとも言えます。個々の理事には素晴らしい才能があり、それをどの様に生かして行くかが問われる事になります。また一方では医療・介護・福祉に対する会員個々の思いもあり、実際には“会員個々の思い”を抽出・整理し、担当理事との合意を経て“組織の意見”として具現化して行く事が私に課せられた責務であると考えています。さらに公益法人の最高意志決定機関はあくまでも“総会”であり、その承認を得た上で全ての理事会の会務は行われることが基本原則となります。また2名の監事による監査・承認も必須となります。そしてこれら全ての課程を経て公益法人としての姿勢・方向性が決まると考えます。翻って現実の社会では安房地域も深刻な問題を多々抱え、地域の在り方自体が問われている状態です。すでに安房医師会は3市1町を内包した組織構成となっていますが、地域内の行政単位毎に施策も異なり、『総意としての地域の方向性が今ひとつ明確でない』ことも否めない現実です。これまでの歴史を振り返っても行政単位・体制は変化しても『地域に於る医療と教育の必要性は変わっていない』と感じています。そして地域に住むことが可能となるための『安全保障の基盤、社会の共通資本』として『医療供給体制や教育設備・制度』はあるべきかと考えています。しかし一方でこれら公的な医療・教育に係る財政負担は甚大なものでもあリ、地域住民の御理解・御協力が必須となります。勿論採算性は非常に重要なもので安房地域の財政が厳しい現実を無視する事はできません。しかし計算のみで安房地域の将来を論ずる事には違和感を覚えることも事実です。将来の安房地域を『社会基盤となる医療・教育の面から再構築する事が重要である』と考えます。そのためには積極的な教育を行い有能な人材を育てることが必須であると考えます。幸い安房医師会には優秀な理事が集まり、さらに小嶋良宏・前安房医師会長が千葉県医師会理事に就任された事により、県・県医師会との風通しも今まで以上に良くなることが期待されます。そして私の任期中に地域に在り方を踏まえた地域医療構想が活発に議論され素敵なハーモニーが奏でられる事を目標として尽力致します。


巻頭言 Vol.54 No.4 2018

2018/07/10(火)

巻 頭 言

安房医師会理事 岡田唯男

2年に一回の安房医師会の理事改選が行われリーダーシップ及び運営体制が一新しました。

一部の入れ替わりはあるものの、多くのメンバーが続投で、これまでなされてきたこともきちんと引き継がれることが期待されつつ、新しい風も入り、丁度良い程度の新陳代謝ではないかと感じています。

正直なところ、医師会の理事に入れて頂く前は、医師会に対してはなんだか胡散臭い開業医の集団ではないか、と感じていましたが、中に入ったところこれは全くの誤解で、いわゆる食わず嫌い、内実を知ろうともせず、勝手に決め付けてしまっていたということで反省をしております。しかしながら、医師会の運営に関わったことのない会員にとってはおそらく、私が例外ではなく、医師会の活動ができるだけ、会員の皆様にわかるようにすること、理事でない会員の皆様にも、関われる、関わって頂ける機会や窓口をできるだけ多く用意すること、いわゆる会員の皆様の当事者意識の向上が極めて重要と感じております。

他の医師会は分かりませんが、安房医師会の理事の面々は極めて誠実にこの地域のことを考えて医師会の運営活動を行っております。ただ、「よそ者、若者、馬鹿者(世の中や組織を変えるのはこの三者と言われています)」の立場から見ていると、様々な決定をする動機、目的は善意に満ちたものであるけれど、根拠が時として、サイエンスに基づいていなかったり、世の中のスタンダードからそれていたり、最初は正当な理由があったかもしれないけれど時代が変わってその正統性を失ったローカルルールを/オールドルールをただ踏襲しているだけだったり、個人の経験談に基づいていたり、ということが時々見られるように思えます。もちろん、長年の経験や土地勘といったものが極めて価値を持つこともしばしばではありますが、世の中の流れとスタンダードとは何かを常に見据えつつ、南関東の田舎のお殿様にならないよう、よそ者、若者、馬鹿者の精神を失わずに医師会活動に関わり続けていきたいと思います。また、批判のための批判ではなく、愛情のある建設的な批判はぜひ会員の皆様からも遠慮なくいただけることが、医師会が健全な組織であるためには重要と思います。

限界自治体というのは、65歳以上の高齢者が人口の50パーセントを超え、税収入の低下と高齢者医療、高齢者福祉の負担増で財政の維持が困難になった自治体の事を指します。国立社会保障・人口問題研究所が2012年に公開した日本の将来推定人口によると、2040年に千葉県で限界自治体となるのは6つあり、そのうち2つが安房地区に存在します(鋸南町、南房総市)。人が住み続けることができるために必要なインフラは買い物、電気、上下水道など様々なものがありますが、医療は絶対にはずすことのできないインフラです。これは、高齢者だけではなく、若い子育て世代にとっても、同等、もしくはそれ以上の重要性を持ちます。医療提供体制を安定させるということは、医療の担保だけでなく、人がその地域に住み続けられるかどうかの根本的な要素を担保することになるのだという自覚を再確認して、皆様の活動の支えとしていただければと思います。


巻頭言 Vol.54 No.3 2018

2018/05/10(木)

巻 頭 言

安房医師会理事 小田常人

 4月より6年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定が施行されました。今回の改定は団塊の世代が75才になる2025年とそれ以降の社会経済の変化への対応に向けた道筋を示す、実質的に最後の改定となる重要な節目だと言えます。

 まず改定率に関しては、診療報酬本体部分が0.55%引き上げられた一方で、薬価の大幅な引き下げにより全体としては1.19%のマイナス改定となり、この傾向は今後も続くことが予想されます。重点課題としては、地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進が示されており、関連する様々な項目が見直されました。外来医療の機能分化とかかりつけ医機能の推進を目的に、紹介状なしの大病院受診時の定額負担の対象範囲の拡大、「地域包括診療科・加算」、「認知症地域包括診療科・加算」がそれぞれ2段階となり、その医師配置に関する要件が緩和されています。

 在宅医療についても評価が見直され、算定項目が新設されました。他の医療機関から訪問診療の依頼を受けた複数の医療機関が評価の対象になる、「在宅患者訪問診療科Ⅰ.2」が新設され、様々な病気を同時に罹患している患者が、専門の他の病院を受診したい場合なども連携が容易になります。また、在宅療養支援診療所以外の診療所が、他の医療機関と連携し、24時間の往診体制及び連絡体制を構築した場合に加算される「継続診療科加算」が新設されました。これによって、在宅医療に従事する医師の負担が軽減されるとも考えられます。さらに、要介護2以上、認知症高齢者の日常生活自立度でランクⅡb以上の患者など、状態に応じたきめ細やかな訪問診療に対し加算される「包括支援加算」も新設されます。これまで、在宅医療に対する、診療報酬上の評価があまり十分ではありませんでした。そのため、高いニーズにもかかわらず、在宅医療を行う診療所はそれほど多くはありませんでした。今回の改定で、評価が見直され、新規参入が進むことが期待されます。

 安房地域でも、地域包括ケアシステムの構築にむけて、医師会、行政が中心となって議論が行われています。今回の診療報酬改定により、在宅医療を積極的に行う診療所が増えることにより、病院、施設、との連携もスムーズとなり、より良いシステムができると思われます。私も微力ながら、協力していきたいです。

 


巻頭言 Vol.54 No.2 2018

2018/03/10(土)

巻 頭 言

新年度のスタートにあたり

安房医師会理事 亀田信介

 2018年度は、診療報酬と介護報酬の同時改訂が行われると同時に、新専門医制度のスタート、医師の働き方改革など、医療界の未来に大きな影響をもたらす年になるでしょう。

 診療報酬制度については、報酬額よりも、今後の医療施設や介護施設のあり方を含む医療・介護連携をはじめとした地域包括ケアに対する方向づけを明確に打ち出すという意味合いが強いと思います。

 医師の労働問題は、政府の働き方改革という方針に沿って突然大きな問題としてクローズアップされました。労働基準監督署が医師の労働時間や時間外手当の支払いをめぐって、多くの医療機関の立ち入り調査を行っています。しかし実際問題として、医師の労働時間については定義も測定手段もありません。若手医師たちは、院内で多くの時間を自己研鑽のための学習や研究に使っています。そもそもさまざまなキャリアや価値観の異なる医師たちと時間を共有することがいかに貴重な学びの場となるか、医師にとっては周知のことです。

 また厚生労働省は、日本の国民皆保険制度は低コスト・高品質の世界に誇れるシステムだと威張っていますが、これを可能にしてきたのは医師の多大な自己犠牲によるものです。そこにむやみに労基の理論を持ち込めば、地域の救急医療などは真っ先に崩壊します。

 現に安房地域でも富山国保病院と鋸南国保病院に労基の調査が入り、医師の長時間労働に対する指摘を受け、今後の運営方針を模索し苦しんでいます。しかし、安房地域の3つの自治体病院は、それぞれ3名の常勤医師しかいませんから、労基の指導を遵守したら、救急どころか、病院としての最低条件である24時間、365日医師を常駐させるという規定を守ることすらできません。

 一方、今年から新専門医制度がスタートするため、基本診療領域における都道府県ごとの応募状況が見えてきました。日本専門医機構は、地域偏在の問題は無いと主張していますが、首都東京への一極集中と診療科間の偏在は明らかに加速しています。さらに、今後は研修病院でないかぎり、専門医研修を修了する前の若手医師の確保はもちろんのこと、指導医の確保も極めて困難になると思われます。このような状況の中、安房地域の医療・介護サービスを守ってゆくためには、合理的で持続可能なシステム改革が必要です。例えば急速に進歩すると予想される情報通信技術を活用した遠隔診断や遠隔診療、さらに人工知能(AI)による画像診断や臨床診断等のシステム構築や、地域医療連携推進法人等による施設類型や連携の抜本的見直しなどが考えられます。

 医療は地域の重要なインフラです。これを守り、少しでも効率的で質の高いサービスを提供することが私どもの使命と考えます。


巻頭言 Vol.54 No.1 2018

2018/01/10(水)

巻 頭 言

安房医師会 会長 小嶋良宏

新年明けての冒頭の挨拶文は失礼ながら割愛させていただきます。
黄金比は、1:1.618、1÷1.618=0.618、61.8%としておこう。冲中先生の最終講義での有名な数字は14.2%、言い換えれば85.8%。大学での成績の評価は、単純に優、良、可、不可。ご承知の通り優は80%(80点)以上の点数。もちろん可は60%(60点)以上であり、黄金比と可は似たような数字である。
我々の任期も残すところ6ヶ月になってしまいました。やり残したこと、継続して行っていかなければならない事業など書ききれないほどありますが、3月に行われる総会で発表する事業計画案をこの新年号に記載します。

主文、地域医療について行政その他関係する機関と議論、連携し永続的に考えていく。

地域医療を守ることと、地域住民の健康を守ることは全く同義語と考えます。医療施設がない場合、どうやって病人を治療し、助けるのでしょうか?医療施設がなくなってしまっては住民の健康を守ることはできません。日本の、いや世界の国々を構成する住民一人の命を守ることがその地域、国、世界を守ることに通じます。医療なくして住民の健康を守ることなど不可能です。

鴨川市国保病院建て替えの件は、地域医療を守るまさにその第一歩です。この件は鴨川市だけでの問題ではなく、広く安房地区の医療問題としてとらえねばなりませんので学識経験者、県庁、保健所長や行政担当者といった方々と会合をしてきました。理由は、鴨川市以外の住民も受診、災害があった場合には他地区の住民も利用する中核病院として機能することにもなりますし、他の公立病院もいずれ建て替え問題に直面しますので今後も多方面と協議をする必要性があるからです。

この事案をきっかけに地域医療を考えていく機とし、話し合いを重ね、公立病院だからこそできる医療、他の公立病院の見本となる運営や内容、私立病院や医院と共存共栄し、素晴らしい医療を提供できる施設となることを期待していますが、医師不足など解決しなければならない問題があり、その実現には多くの協力と理解が必須です。

学校職員に対する眼科関連の検査法や疾病の講義、父兄や児童、学童に対する健康教室や啓蒙なるものを組織的に行えなかったことは未だに悔いが残ります。教育委員会には何回か相談を持ちかけましたが、いまだかつてそれは実現されていません。安房郡市の一部の小学校では、禁煙教室と称し喫煙の健康被害についての講演は行われているので、決して実施率はゼロではありませんが、組織的に実施できなかったことは大いに反省しています。松戸市医師会では、まちっこプロジェクトと称し子供のために出前講座、言い換えれば健康や病気に関する講演会を組織的に行っています。今後は、松戸市医師会を見習い、未来の日本、いや世界を支える子供のための何らかの健康や病気に関する啓蒙事業を組織的に実行しなければなりません。

在宅医療、介護と医療の多職種連携、協力に関しても今後も継続して行っていきます。

幸いにも、この分野に秀でている理事、会員や行政の協力もあり、微々たる歩みですが、各関連施設と顔の見える関係は構築され、さらには信頼関係も育ちつつあります。しかしながら、介護関連施設の横のつながりがまだまだ弱いように見受けられますが、担当理事が奮闘しており、横のつながり、ネットワークを構築中であり今後に期待します。

災害医療に関しては、願はくば地震は起きて欲しくないし、津波にも襲われたくないのが本心でありますが、いつなんどき起きるのか誰にもわかりません。大雨による災害発生も懸念されます。このような災害発生時においては、行政との協力のもと医師会はできる限りの協力することは言うまでもありません。最近、市の担当者と小さな会合を持ち、そこで出た意見をまとめ、医師会理事会に提出、審議しさっそく実行に移すことになりました。

行政と医師会はクルマの両輪のごとく協力し支え合う必要がありますので、定期的に行政と会合を持ち、市の考えを聞き、情報を共有し住民のために活動していきます。

さて、我々が行ってきた活動の評価は如何に?可であってほしいがその判定は歴史に任せ、次期理事の方々には黄金比のようにバランス良いデザインの如く、バランス感覚が優れた運営をする安房医師会理事会とな ることを願うとしよう。


巻頭言 Vol.53 No.6 2017

2017/11/10(金)

巻 頭 言

安房医師会 理事 杉本雅樹

 

安房の未来は?
私の巻頭言が掲載される頃には、新しい日本のリーダーが決まっていることでしょう。
締め切りに追われ(正確には締め切り過ぎ)、ふとテレビを点けてみたらnews23で党首討論をやっていました。なんと、今回の解散は、“迫りくる危機のための解散!!、北朝鮮問題と少子高齢化問題だ!!”と安倍首相がおっしゃっていました。へぇ~、そうだったんだ!!(当然モリトモ・カケイは関係ありません)これが私の率直な感想です。

さて、迫りくる危機、少子高齢化!!高齢化に関しては他の先生にお譲りし、私は少子化について少々お話しできればと思います。
以下の表は、ここ15年間の安房郡の出生数です。全国的には毎年2%の出生数減ですが、安房管内は約5%の人口減です。また、お隣の上総地区(富津、君津、木更津、袖ケ浦)のH27年の出生数の合計は、2,406人です。みなさまいかがでしょうか?

安房管内の出生数

当法人は産婦人科有床診療所なので、診療報酬の約80%は出産に付随するものです。そして、364日24時間助産師の対応、どんな時でも帝王切開できる体制を整えているため、人件費は相当なものです。

話は変わり、内閣府のホームページによると、地域別にみた医療・介護の余力において、安房は関東で唯一、“医療は余裕、介護は平均レベル”のようです。
これは、既に医療に余裕のある安房地区(あまり潤っていないということか?)において、若年層が激減してくる10年、20年後には、会員の皆様の運営も相当厳しいことが明白であり、今からそれなりの準備が必要であります。
私は、執行部以外の安房医師会の現職理事の中で、最年少にして最長在任理事であります。医師会病院の移譲から現在の体制に至るまで様々なことがあり、その一つ一つが自分の人生観の土台になっています。その安房医師会が今後どうなっていくのか?
私はいまだ最年少理事でもあるので、決して傍観者にならずに可能な限り関わっていこうと思います。最近バタバタしているため、会員の皆様にご迷惑をおかけしている場面が多ございますが、ライフワークの一つとして医師会活動をしたいと思います。どうぞ、よろしくご指導お願いいたします。

安房の未来は明るくなくとも、安房医師会の未来は素晴らしいものにしたいというのが私の思いです。

 


巻頭言 Vol.53 No.5 2017

2017/09/10(日)

巻 頭 言

安房医師会 会長 小嶋良宏

近年、Information and Communication Technologyが発達し、我々が生活していくうえで、それを利用することはもはや切っても切り離すことができない世の中になっているのは否定できないであろう。
特にSocial Network Service(以下SNS)を利用している人々は全世界に存在する。
最近、そのSNSを使ったツールの勉強会に出席したので、その概略について以下に記す。
災害時の安否情報共有アプリ。
その製品はスマートフォン、PCを使っての情報伝達SNSである。家族、企業、学校、グループなどで管理者(権限者)を決め、専用アプリを個人で取得、登録する。登録したメンバーの安否情報を管理者は一覧で確認することが可能なサービスである。
使用方法であるが、スマートフォンの画面に幾つかのボタンが表示される。体の状態を伝える、周りの状態を伝える、これからの活動を伝えるボタンが並んでおり、自分の状況を画面にタッチするだけで、瞬時にその情報が管理者に伝わる仕組みになっている。
たとえばの使い方であるが、医師会が管理者となり、賛同された会員がそのアプリをダウンロード。
災害時には、先に述べたように画面をタッチし、情報を伝達したとしよう。医師会のPCの画面には、各会員が画面を押した時間、地図などが表示される。その情報を参考に、緊急医療体制などを構築することが可能であると考える。
しかしながら、管理者が被災した場合には安否確認ができないだけではなく、機能不全に陥る懸念がある。
このSNSを利用していない会員の安否確認ができない場合、他の方法を使っての確認となるのは言うまでもない。しかしながら大災害のパニック状態時にどのようにして安否を確認するのか、誰が確認するのかは今後の課題である。
医療と介護を担うグループ内での連携のアプリ。
やはり、スマートフォン、PCを使ってのSNSである。
要介護者、在宅患者を中心とした多職種連携ツールであり、ヘルパー、ケアマネ、医師、看護師、薬剤師などがチーム医療をするときの医療介護連携をスムースに遅滞なく行う方法である。
たとえば、医師が往診した時にその患者さんの情報を入力すれば瞬時にチームを組んでいるメンバーに情報が伝わる仕組みであり、いちいち電話をしたりファックスを送ったりしなくて済む。また、情報を共有することにより、同じ質問をしなくて済み、2度手間、3度手間といった無駄を省くことができる。
文字情報だけではなく、その場において写真を撮って送れば体の状態を瞬時にチーム全員が把握することが可能、また災害時には近所の状況の写真を送ることにより被災程度の状況判断にも有用かと考える。

以上2種類のSNSの概略を列挙したが、短所ももちろん存在する。
使用者側の一般的な短所としては、スマートフォンの充電切れ、機器の故障であろうか。サイト側では、サーバーの故障も考えられる。
大きな短所としては、故意またはミスによる情報漏洩である。災害時には、個人の安否情報は個人情報保護法違反にはならないとい考えるが、介護医療関連ツールにおいては患者情報が漏れた場合、最大のプライバシー侵害となってしまう。その情報の管理は厳密でなくてはならない。
また、集められた通称Big Dataを加工し、その情報を特定の企業なりに売りつけビジネスとしてしまうかもしれないが、それを心配しても埒があかないのが現状である。
いずれにせよ、上記の2点はただの情報伝達ツールであって、最後には人間対人間の関係が最重要になる。
安否情報共有アプリは、それを登録している人々には何らかの恩恵があると考えるが、全住人が登録するのは不可能である。もし、災害時に登録していない人々が不明になった場合には住民の方々、特に隣近所の方々、郵便、宅急便や新聞配達の方々などの協力がなければ安否確認は不可能であると考える。
医療介護連携アプリも同様、患者さんと我々の関係が良好でなくては信頼関係を築けないし、信頼関係あっての診療である。このようなツールをただ使っただけでは信頼関係は構築不可能であり、信頼関係を作るのは人間、ツールではないがしかし情報漏洩されたデータを悪用し信頼関係を壊すのも人間である。

将来、このようなツールが蔓延、溢れた時に大事なのは、得られた情報に飲み込まれるのではなく、情報を取捨選択し利用する能力であり、我々がツールに使われるのではなく、使いこなす能力であり、人間が主、ツールは従、情報を制するものが、、、、、、、、、。