巻頭言 Vol.62 No.5 2026
巻頭言
安房医師会会長就任にあたって
会長 小林 剛
このたび、原徹直前会長から引き継ぎ安房医師会会長に就任いたしました。
長年にわたり安房地域の医療を支えてこられた歴代会長、諸先輩方のご尽力に深く敬意を表するとともに、これまで築かれてきた歩みを受け継ぐ責任の重さを強く感じております。
安房地域は、温暖な気候と豊かな自然、農林水産業、観光資源に恵まれた魅力ある地域です。一方で、人口減少と高齢化が急速に進行し、地域社会を取り巻く環境は大きく変化しています。
館山市、鴨川市、南房総市、鋸南町の人口は、令和7年国勢調査速報値の合計で10万8,234人となり、令和2年からの5年間で約1万1,900人、率にして約9.9%減少しました。令和2年時点の高齢化率は43.0%で、75歳以上の方が人口の23.2%を占めています。将来推計では、2050年の人口は約7万5,000人になると見込まれています。
人口減少が進んでも、地域医療の必要性が単純に小さくなるわけではありません。高齢者の一人暮らしや高齢者のみの世帯が増加し、複数の慢性疾患、認知症、フレイルなどを抱える方が増えることで、医療に求められる役割は一層大きく、複雑になります。
安房地域は、約576平方キロメートルという広い面積を有し、山間部や半島部を含んでいます。そのため、医療機関が存在することだけでなく、住民が必要なときに必要な医療へ確実に到達できる体制を維持することが重要です。
安房医療圏は、医師偏在指標では医師多数区域とされています。しかし、診療所を中心とした外来医療の指標は必ずしも高くなく、診療科、地域、医療機能による偏在も存在します。医師の総数だけでは、安房地域の医療の実情を十分に表すことはできません。
高度急性期医療を担う病院、地域の救急医療を支える医療機関、身近な健康問題に対応するかかりつけ医、慢性期医療、在宅医療、介護など、それぞれの機能を地域全体でどのようにつないでいくかが、今後ますます重要になります。
このような状況に対応するためには、個々の医療機関の努力だけではなく、病院と診療所、医療と介護、行政と関係団体がそれぞれの役割を共有し、地域全体で支え合う体制を構築する必要があります。
医療は、地域の重要な社会基盤です。
安房医師会には、住民の皆様が安心して暮らせる医療環境を守ることに加え、若い世代の流出抑止や移住・定住の促進など、地域社会が抱える課題の解決にも寄与する役割があると考えています。
若い世代が地域で結婚し、子どもを産み育て、働き続けるためには、安心できる小児医療、救急医療、学校保健、予防接種などの体制が欠かせません。
また、安房地域への移住を検討する方にとっても、病気になったときに適切な医療を受けられるか、年齢を重ねても住み慣れた地域で暮らし続けられるかという点は、住居や仕事と同様に重要な判断要素となります。
医療の充実は、医療分野の中だけで完結するものではありません。地域の安心を高め、人を呼び込み、雇用を生み、観光や産業を支え、地域社会の持続可能性を高めることにつながります。
今後、安房医師会として、医療機関相互の連携をさらに強化してまいります。
予防、外来、救急、入院、リハビリテーション、慢性期医療、在宅医療、介護、そして人生の最終段階に至るまで、住民の皆様が医療や療養の段階が変わっても取り残されることのない、切れ目のない体制を目指します。
救急・災害医療体制の維持と強化も重要な課題です。安房地域は、台風、豪雨、津波、長期停電などの災害リスクを抱えています。平時から医療機関、消防、行政、介護事業者などが情報と役割を共有し、災害時にも診療、薬剤、酸素、電力、通信などを可能な限り維持できる体制を整える必要があります。
在宅医療と介護の連携についても、より一層推進してまいります。医師、歯科医師、薬剤師、訪問看護師、リハビリテーション専門職、介護職、ケアマネジャーなどが職種の垣根を越えて連携し、住民の皆様が可能な限り住み慣れた場所で生活を続けられる地域づくりに取り組みます。
同時に、地域医療を担う人材の確保と育成も欠かせません。若い医師や医療従事者が安房地域で学び、働き、生活し、将来にわたってこの地域に関わりたいと思える環境をつくる必要があります。医療機関同士が限られた人材を奪い合うのではなく、地域全体で人材を育て、支え合う仕組みを構築していくことが重要です。
医師会は、医師だけのための組織ではありません。住民の健康を守り、地域の未来に責任を持つ公益的な団体です。行政、歯科医師会、薬剤師会、看護・介護関係団体、教育機関、経済団体、地域住民の皆様との対話を深め、医療の立場から地域づくりに積極的に関わってまいります。
人口減少という大きな社会変化を、医療だけで止めることはできません。しかし、安心できる医療のない地域に、人は住み続けることができません。
医療を守ることは、暮らしを守ることです。そして、暮らしを守ることは、安房地域の未来を守ることにつながります。
安房地域には、長い年月をかけて築かれてきた医療機関相互の信頼と、地域のために尽力する多くの医療・介護従事者がいます。これは、安房地域が有する極めて大きな財産です。
この財産を次の世代へ引き継ぎ、さらに発展させるため、より強固な医療連携によって安房地域の充実した医療を構築するとともに、若い世代の定着、移住・定住の促進、そして地域活性化に貢献してまいります。
安房医師会の活動に、今後ともご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
巻頭言 Vol.62 No.4 2026
巻頭言
安房医師会 理事 杉本雅樹
この度19 年務めてきた安房医師会理事を卒業し、晴れて一会員として安房地域の産婦人科医療を担っていくことになりました。
これまでの長い年月、安房医師会の皆さまには並々ならぬご指導、ご鞭撻、たまに叱咤をいただき、その一つ一つが今の私の医師としての活動に生かされております。この場を借りて感謝申し上げます。
さて、私は平成19 年より医師会理事として医師会運営をしていました。近年の医師会運営においては最長理事であったと思います。その間4 名の歴代会長の下で可愛がっていただきました。思い出深い出来事としては、故宮川準会長時代の医師会病院の太陽会への移譲の一部始終の経験で、医師会における地域の期待と位置付けを学びました。
間宮聰会長時代の移譲後の運営と、医師会理事会の人間模様を経験し、組織の在り方と現実との苦悩を体験することができました。
小嶋良宏会長時代の医師会と亀田病院との連携強化による新たな時代を体験し、未来への期待を感じ、時代を切り開く人の姿勢を学びました。
原 徹会長時代の小嶋良宏千葉県副会長輩出による県との太いつながりを感じた医師会運営を体験し、また、コロナ禍をまたいだことで起きたボタンのかけ違いを経験したことで、会員それぞれの医師会に対する強い想いを感じることができました。これらは、理事を経験したからこそ得られた私の財産であります。
私は現在大腸がん治療中であることもあり、今後の活動そのものがどうなるか未知数ではありますが、自分に起きている事象全てを前向きに捉え、今までの経験を少しでも多くの医師、コメディカルの方々に伝えていこうと思います。
今後は、身体を労わりながら、自ら立ち上げた産院の事業をより充実させ、地域のお産が守られるような活動を人生かけてやっていこうと思います。
一言では語り尽くさないものではありますが、長い間本当にありがとうございました。
そして、今後もどうぞよろしくお願い致します。
巻頭言 Vol.62 No.3 2026
巻頭言
豊臣兄弟の絆に学ぶ、安房の「和」と地域医療
安房医師会 理事 山本大夢
二〇二六年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』が注目を集めています。稀代の天才として天下を駆け抜けた兄・秀吉と、その影で実務を担い、周囲との軋轢を解消し続けた弟・秀長。この兄弟の絆が描かれる今、私はふと、私たちの安房地域が目指すべき医療の姿を、この二人の関係性に重ねて考えています。
天下統一という偉業は、決して秀吉一人の力で成し遂げられたものではありません。秀長という、組織のバランサーであり、最高の「調整役」がいたからこそ、多種多様な家臣団が一つにまとまり、大きな力を発揮できたと言われています。秀長は決して表舞台で華々しく目立つことはありませんでしたが、彼が没した後に豊臣政権が揺らぎ始めたことを見ても、その存在がいかに不可欠であったかが分かります。
さて、私たちの安房地域に目を向けてみますと、全国を上回るスピードで高齢化が進み、医療ニーズは複雑化・多様化の一途を辿っています。かつてのように、一人の医師がすべてを完結させる時代は終わりを告げました。今の地域医療に必要なのは、まさに「豊臣兄弟」のような、強固な支え合いの精神ではないでしょうか。
医師、看護師、薬剤師、リハビリ職、介護スタッフ、そして行政。地域医療に携わる私たちは、いわば一つの大きな「家族」のような存在です。高度な治療を担う病院が「秀吉」のような先導役であれば、それをつなぎ、退院後の生活を支える在宅医療や介護の現場は、地域に安心を根付かせる「秀長」の役割を担っています。
大切なのは、自分の専門領域を全うするだけでなく、隣にいる他職種の苦労を想像し、手を差し伸べる「調整力」です。「あの職種がいてくれるから、自分の仕事が成り立つ」という感謝の気持ちが循環する時、安房の医療は一つの大きなチームになります。
「内々のことは宗易(千利休)に、公のことは秀長に」と言われるほど、秀長は周囲から厚い信頼を寄せられていました。私たち安房医師会も、地域の多職種の皆様にとって、困った時に一番に相談でき、互いに背中を預け合える「秀長」のような頼もしい存在でありたいと願っています。
一人の天才を待つのではなく、多くの「兄弟」たちが手を取り合うことで、この安房の地に、誰もが安心して老い、暮らせる「太平の世」を築いていこうではありませんか。ドラマの展開を楽しみにしつつ、私たちもまた、この地で新たな絆の物語を紡いでいければ幸いです。
巻頭言 Vol.62 No.2 2026
巻頭言
安房医師会 理事 宮川慶
本年も3月を迎え、年度末の節目の時期となりましたが、会員の先生方が来年度も希望をもって新しい年を歩んでいけることを願っております。
1月25日に新春の一大イベンドである若潮マラソンが開催され、私にとっては17回目の若潮マラソン、今年も無事に完走することができました。気温は8度、スタート時は肌寒かったものの前日の強風は止み、薄雲のかかった富士山や伊豆大島を眺めながら絶好のコンディションでスタートしました。北条海岸はランナーと応援している方の熱気に溢れ、私の地元の沼~宮城あたりでは当院スタッフや患者様からの大声援を背に「さあここからだ」と気持ちが引き締まります。起伏に富んだ洲崎までの海岸沿いを疾走した先には下り基調で菜の花に囲まれたフラワーライン、アドレナリンも自然と放出され気持ちよく走り抜けます。相浜の先で犬石方面へ折り返し、神戸/茂名地区から見物海岸へ抜けるためには強烈な登り坂を登らなくてはならず、心の強さが試されます。休暇村へ戻ってくれば残りは9km、沿道からのおかえりなさいの声援に涙をこらえ、北条海岸まできたらあと少し。資生堂様のスポンサードによるネーミングライツで名称の変わった福原有信グランドでゴールした先にはご褒美の中村屋のクリームパンがまっています。このドラマチックな若潮マラソンのコースは館山の自然や景観を満喫でき、走力や精神力が試される最高のコースです。このコースを走破するためには様々な練習を組み合わせることが大切になります。短い距離を休憩を入れながら何本も走るインターバル走、10km前後を全力で走るペース走、20km以上を8割程度で走るロング走、60分程度をリラックスして走るジョグ、これらを組み合わせ筋力・持久力・心肺能力をバランスよく発達させることが良い記録を出すためには大切になってきます。この日々の練習を土台としてさらに大きな力になるのが、本番でのみ発揮される本番力です。本番力とは他のランナー達と並走することで得られる推進力や、ボランティアの方の支えで得られる補給や活力、背中を押してもらえる沿道の声援など、本番では日々の練習で培った力が増幅する様々な「本番力」が加味され、時に自分でも驚くような記録がでることがあります。
安房の医療現場は、診療所や病院や医師会のこれまでの様々な努力や工夫が土台となり構築された病診・診診ネットワークの中で支え補い合い、その連携力は他地域から羨む声をいただくことは少なくありません。マラソンに例えると「本番力」が日常として発揮され個々の力が存分に発揮されている素晴らしい環境であると言えます。我々安房医師会会員はこの素晴らしい環境に甘んじることなく今以上に「本番力」を高めるべく、更に連携を深め、支え合う気持ちを強くしていくことが求められていると思います。もちろん環境や連携だけでは良い結果は得られません。個々が日々研鑽し、知識を増やし、技術を磨き、診療所や病院の質を改善していくことは必要条件です。毎年会員の先生方が皆、前年を上回る医療を提供できたと胸を張って言えるように皆で切磋琢磨しながら個々を磨き、繋がりを深め安房の医療を前へ進めていきましょう。
令和8年度が、安房医師会の明るい希望と新たな絆をもたらす一年になりますよう祈念いたします。新年度もどうぞよろしくお願い申し上げます。
巻頭言 Vol.62 No.1 2026
巻頭言
安房医師会活動の継続を願って
安房医師会 会長 原 徹
令和7年10月、日本国第104代首相に奈良県出身の高市早苗氏が選任されました。1961年昭和36年3月生まれの64歳、平成5(1993)年に32歳で衆議院選挙に初当選、その後国政での32年間の御活躍を経て首相の座に就かれました。大学を御卒業後は松下政経塾に入塾。当時から国の将来を憂い、国政への参加を決意されたとの事です。ところで安倍晋三元首相が突然亡くなられてから3年が経過しました。安倍晋三氏は歴代最年少となる52歳で首相に就任。「美しい国」を国家像として掲げ、「戦後レジームからの脱却」をその基本方針とし、多くの国民の支持を受け第1次・安倍政権が発足しました。然し御自身の体調悪化により53歳で一旦は首相の座を降りられました。その後に病を克服され2012年12月には第2次・安倍内閣が発足。その政治姿勢は一貫して国の安寧・発展を願い、その基盤として「安全保障と社会保障のあり方」を問うものでした。高市首相も子供の頃から教育勅語を学び、松下幸之助を師と仰ぎ松下政経塾に入塾。その国家観として「国民の生命と財産、国土と資源、そして国家の主権と名誉」を守るべきものとして掲げられています。その一方では『行きすぎた結果平等を削減し、機会平等を推進する」。「社会保障の不正な受給を阻止する」など「今を生きる日本人と次世代への責任を果たすこと」も強調されています。翻って安房医師会はその定款に「この法人は、医道の昂揚・医学医術の発達普及と公衆衛生の向上を図り、千葉県民の保健と福祉を増進し、もって地域社会の健全なる発展に寄与することを目的とする」と謳っています。これまで自然災害、新型コロナを始めとする種々の感染症の猛威等により我々が生活する安房地域の安全保障も脅かされてきました。さらに周辺諸国との緊張状態や様々な国際問題、財政問題等が加わり、行政・消防・警察・自衛隊等との連携のあり方も安房地域の社会基盤維持の為に非常に大切である事を痛感しています。その中で常に指摘されることは無駄な医療・介護・福祉やその他の社会保障施策が無いか?との御意見です。次の世代にこの地域を維持するには国や県からの施策に頼るだけでなく、我々地域住民の努力と辛抱が必要です。より限られた財源で、質の高い医療を提供すること。そして医師会のあり方もそのレジームから変えて行かなければなりません。それには残念な気持ちは拭えませんが「変化と連携強化」が必要です。そして日本人としての矜持である「自立と勤勉の倫理」を維持し、進めて行くことが必要かと考えます。私の会長としての任期は本年、令和8(2026)年6月の定時総会で終了します。平成14(2002)年、齢50で安房医師会の理事に加えて戴き、様々な役職を経て2018年6月から現在の安房医師会長に選任して頂きました。最後の任期中に次の世代へ会務を引き継ぎ、医師会活動をより活性化し、会員の為だけでは無く広く地域の為に活動する事を目標とします。これまでには皆様の御支援、御理解だけではなく多くの御批判も併せて戴きました。 次の世代も「自立と勤勉を矜持とし、リスクを取って努力したものが報われる活動」を続けて戴きたいと思います。
巻頭言 Vol.61 No.6 2025
巻頭言
安房医師会 理事 角田泰彦
近年、医療の世界にもAIやICTといった先端技術が急速に浸透してきました。電子カルテの普及、遠隔診療の推進、診断支援システムの導入など、医療のあり方そのものを変える波が押し寄せています。大規模病院ではすでに当たり前のようにデジタル化が進んでいますが、一方で現実には大きな壁も存在します。
私どもの病院は未だに紙カルテを使用しており、数年前に電子カルテの導入を検討しました。しかし、維持費だけで月額30万円ほどかかる見積もりが出され、経営的に導入を断念せざるを得ませんでした。医療の効率化や情報共有の観点からは電子カルテの意義は明らかですが、中小規模の医療機関にとっては費用負担が依然として重く、技術の恩恵を受けにくいという現実があります。
さらに、医療DXが進展しても地域の医療課題がすべて解決されるわけではありません。田中かつら先生がアンケート調査を実施されたように、様々な事情から医療過疎となっている地域は今も全国に数多く存在します。その中で、往診や訪問診療を続けて地域を支えている先生方がおられる一方で、今後は特区の制度が導入されれば、多地域からの医療参入によって既存の開業医の実入りが減少する懸念も指摘されています。医療提供体制の多様化は一見前向きなようでいて、地域医療を守る現場にとっては新たな課題を生みかねません。
こうした現状を踏まえると、デジタル化は医療の未来を切り拓く大きな力でありながら、その導入や活用には経済的・社会的な格差がつきまといます。そして、だからこそ私たちは「医の原点」を見つめ直す必要があります。病を診るだけでなく、人を診る。診療の効率化や制度の変化に振り回されても、患者と向き合う心だけは決して失ってはなりません。
AIやICTは、適切に使えば医師の負担を軽減し、診断の精度を高める大きな味方となります。この点は多くの方が少なからず体験・実感されているでしょう。しかし、患者の不安に寄り添い、信頼を紡ぐ営みは人間にしかできない領域です。技術と人間性を対立させるのではなく、互いに補い合うものとして受け止めることが、これからの医療には求められています。
時代は大きく変わっても、医療の根幹は変わりません。進歩する技術をどう活かすか、そして何を守り続けるのか。その問いに応えながら、地域と患者を支える医療をこれからも築いていこうと思います。
巻頭言 Vol.61 No.5 2025
巻頭言
安房医師会 理事 相 正人
最近の医療問題に関しGoogle開発の人工知能のGeminiに質問してみました(2024年から含む)。 1. 医療の2024年問題と働き方改革 ・医師の労働時間上限規制: 2024年4月から医師の時間外労働に上限規制が導入されました。これにより、医師の過剰労働を是正し、健康確保と質の高い医療提供を目指すことが大きな課題となっています。 ・人材不足への対応:少子高齢化による労働人口の減少や、育児・介護によるキャリア の中断などにより、医師や看護師などの医療従事者の人手不足が深刻化しています。 ICTツールの導入による業務効率化や、働きやすい環境整備が求められています。 2. 2025年問題と地域包括ケアシステム ・超高齢化社会への対応: 2025年には団塊の世代が後期高齢者(75際以上)に達し、国民の約3人に1人が65歳以上になると推計されてれています。これに伴い、医療費の増加や医療従事者の不足がさらに深刻化することが懸念されています。 ・地域完結型医療・介護提供体制の構築: 住み慣れた地域で、医療・介護・予防・生 活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築が喫緊の課題となっています。特に、在宅医療の重要性が高まっています。 ・外来・在宅医療・介護の連携: 高齢者救急の増加や在宅医療需要の増加に対応するため、外来、在宅、介護の連携強化が重要視されています。 3. テクノロジーの活用と医療DX ・AI(人口知能)の医療への導入: 生成AIの活用による業務効率化(MR業務、 データ分析など)や、医師の業務時間削減などが期待されています。 ・オンライン診療・電子カルテの普及: IT導入による業務効率化は、医療現場の働き方改革を後押しする重要な要素となっています。 ・ゲノム医療、再生・細胞医療・遺伝子治療: 最先端の医療技術への期待も高く、今後の発展が注目されています。 4. 患者中心の医療と健康への権利 ・ 世界保健デーのテーマ: 2024年の世界保健デーのテーマは「私の健康、私の権利」であり、健康が全ての人間の基本的人権であることが強調されています。2025年は「健康なはじまり、希望に満ちた未来」で、母子の健康、女性及びその家族のウェルビーイングがテーマです。 ・ 予防医療・健康寿命の延伸: 病気の治療だけでなく、予防や健康寿命の延伸に対する意識が高まっています。 ・ ウェルビーイング: 一人ひとりの心身ともに満たされた状態(ウェルビーイング)の実現に向けた取り組みも進められています。 これらのテーマは相互に関連しており、日本の医療が抱える課題を解決し、持続可能な医療提供体制を構築するために、多角的な視点からの取り組みが求められています。 以上がGeminiの回答でした。 安房医師会ニュースの2024年、2025年の巻頭言を振り返ってみると、「安房地域の安全保障や生活基盤の安定など地域社会の健全なる発展」、「利他的行動による人類の発展」、「少子高齢化に伴う2025年問題や2040年問題」、「診療報酬のマイナス改定と日本医師会の役割」、「コロナワクチンに関する諸問題」、「AIと医療」などでした。 法律や制度に合致しているかどうかを調べるにはAIは有用かもしれませんが、枠を超えた発想や思考をAIはできるのでしょうか?そして最終判断は人間で行うべきだと思いますが、いずれAIもそこを超えてくる日が来るかもしれません。
巻頭言 Vol.61 No.4 2025
巻頭言
安房医師会 理事 亀田俊明
安房医師会への思い
梅雨空が続き、蒸し暑さが身にこたえる季節となりましたが、会員の皆様にはお変わりなくご健勝のこととお慶び申し上げます。早いもので、本年も折り返し地点を迎え、時の流れの早さに驚くばかりです。 さて、医療界を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続いております。働き方改革にはじまり、物価高騰、人手不足といずれも医療現場の運営に直撃しています。2024年度は、全国の病院の約6割が赤字との報道もありましたが、実際には自治体からの繰り入れ等によってかろうじて維持している病院も多く、表面化していない経営困難を抱える医療機関は少なくありません。2025年度は診療報酬の改定も予定されていないことから、大きな改善は見込みめそうにありません。 このような中、安房地域においては少子高齢化が深刻さを増しており、今後あらゆる産業で人手不足が進むことが予想されます。医療分野も例外ではなく、将来を見据え、地域で医療に従事することの意義や魅力を若い世代に伝えていくことは、私たち医師会の大切な役割であると考えています。 一方で、当医師会においては、理事会や役員人事を巡り、選考に至るまで長時間を要する事態がありました。様々なご意見があることは重々承知しておりますが、私たち医師会員の使命は、役職の名誉を競うことではなく、地域の医療をより良くするために力を尽くすことにあるはずです。 個人的なことを申せば、私自身にとってはほぼボランティアといえる医師会の理事職を続けているのは、病院と診療所の橋渡し役を担うことが、地域医療にとって確かな意義があると信じているからにほかなりません。 医師会としての制度設備やルール作りも重要ではありますが、それに過度な時間を費やすよりも、変化する時代にどう対応し、安房地域に安定した医療を提供し続けるか、その本質的な議論にこそ、力を注いでいくべきかと考えております。 現在の理事会体制は、まだ手探りの部分も多く、従来のやり方に慣れた先生方にはご不便をおかけしているかもしれません。それでも新たな視点や、柔軟な発想が少しずつ芽生えつつあり、会としての可能性を広げる契機ともなっていると感じております。 私たち一人ひとりの思いは異なるかもしれませんが、「安房地域の医療を守り、発展させたい」という目標は同じであると信じています。過去の経緯は尊重しつつ、今ある現実を受け止め、ともに前を向いて進んでいくために、現任理事をはじめとした新体制へのご理解とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
巻頭言 Vol.61 No.3 2025
巻頭言
安房医師会 専務理事 原 太郎
AIと医療 AIは私たちの生活を大きく変えつつあり、現代社会では欠かせない存在となっている。今後、医療のさまざまな場面でAIが活用されることで、人手不足や経験不足といった医療現場の課題を解決し、医療インフラに変革をもたらすことが期待されている。実際、当院でも2024年からAI診断技術を搭載した最新の内視鏡機器を導入し、医療現場でAI技術を取り入れている。内視鏡専門医の視点から見ると、診断精度はまだ十分ではないが、病変の発見に役立ったケースも多く経験している。AIのサポートは、人間の疲労や集中力の低下による病変の見逃しを防ぎ(人的エラーの軽減)、微細な色調変化を持つ小さな病変を指摘することもある。当院においても、AI診断を組み合わせることで、早期がんの発見率が向上していることを実感している。AIの診断能力は、内視鏡による消化器がんの診断だけでなく、胸部レントゲン写真における異常陰影の検出や心筋梗塞の診断に関しても、専門医と同等であるとの報告がある。現在は開発段階にあるものも多いが、膨大な医療データを学習したAIが、わずかな異常を察知し、各分野で高精度な診断を実現する可能性がある。最近ではAIを活用したオンライン診断システムも登場し、医薬品の開発や処方にも導入されつつある。また、マイナンバーカードを健康保険証として利用することは、1億人以上の国民データを集約し、医療AIの精度を大幅に向上させることにつながる。国も医療分野におけるAIの開発と利用を推進しており、データの集積とシステムの構築を進めている。 AIが医療分野にもたらす利点と欠点 このように、AIが医療に与える影響は計り知れず、その利用はすでに様々な形で実現している。しかし、その導入には多くの利点がある一方で、欠点や課題も存在する。以下に主な利点と欠点を示す。 AIが医療にもたらすメリット 1. 業務の効率化ができる 2. 医師・看護師の負担軽減につながる 3. 医療の精度と質が向上する 4. 地域の医療格差を解決できる 5. 24時間対応可能な体制づくりができる AIが医療にもたらすデメリット 1. 患者のプライバシー保護の管理 2. 信頼性の担保が難しい 3. AIが人間の判断を置き換えること 4. 導入、維持コストがかかる 5. 故障、障害のリスクがある AI医療の将来とその課題 AI医療における重要な課題の一つは、医師がAIの診断を過信し、「AIパターナリズム」に陥るリスクである。これは、AIの診断が正しいと信じ込み、自らの判断を無視してしまう状況を指す。私たちはAIの判断をどの程度まで受け入れるべきか。ある研究では、多くの医師が自らの臨床的見解と矛盾する場合でもAIの診断を受け入れることが報告されている。つまり、医師がAIに依存し、患者の症状や自身の臨床的判断を無視してまでAIを信頼する事態が生じる可能性がある。AIの進化は医療だけでなく多くの分野に利便性をもたらす一方で、個々の経験が排除され、「AIが最高のエビデンス」として位置づけられていき、人間の存在価値が低下していくことも懸念される。AI診断が最良の選択肢となった場合、医師の判断や人間の存在はどのように変わっていくのか。医師は、治療を受ける患者の感情や信念、文化、宗教など、治療に影響を与えるあらゆる要素を考慮し、患者の診療にあたる存在である。患者はときに、医療行為そのものだけでなく、不安や苦しみを共有したり、安心感や安らぎを医師に求めている。AIは診断や治療の選択肢、技術的な能力において優れているが、人間のような感情を持たず、患者と共に意思決定を行うことはできない。AIは、最終的な判断を受け手に委ねるだけの存在である。医師は一人の人間として患者と向き合い、関わるべきだと考えている。この点は、今後も変わらない医師の存在意義であり、患者が人間である医師に求めるものだと思う。各国で人間の知能をはるかに超えた人工超知能を持つASI ( Artificial Superintelligence)の開発が激化する中、未来の医療に対する期待と不安が交錯しているが、この流れを止めることは難しいであろう。しかし、医療AIがどれほど普及しても、最終的な治療の決定権は人間にあり、AIは医療スタッフの効率を向上させるためのツールとして位置づけられるべきである。 安房医師会におけるAIの活用法 安房医師会は各医療機関と行政の連携が進んでいる地域であり、早期にAIを活用した最先端の健診システムを構築できる可能性がある。マイナンバーカードや医療DXのシステムから、個々の住民のデータを健診システムに投入することで、従来の一律な健診から、各疾患リスクの高い人に、必要なタイミングで健診通知を行える可能性がある。AI技術は課題もあるが、うまく活用することで新しい健診システムの確立が期待できる。
巻頭言 Vol.61 No.2 2025
巻頭言
安房医師会 副会長 野﨑益司
mRNAワクチンの定期接種化に思うこと COVID-19に対するワクチン接種が始まって4年が経過した。2020年初頭、すでに欧米では多数の死者が出ていたが、我が国の感染状況は、PCR検査体制の不備による過小評価もあるが、一応は穏やかな様相を呈していた感があった。しかしそんな中、有名タレントの感染死は国民に危機感を与えるに十分な出来事であり、更には厚労省アドバイザリーボードの一員であった西浦北大教授の数理モデルに基づく“無対策で42万人死亡説”は余りにも衝撃的であり、それらをもとに政府は思い切った行動制限策を講ずることとなった。 緊急事態宣言は感染症のアウトブレイクに対し有効な手段である一方で経済的損失は計り知れないほど大きく、このため感染対策のもう一つの柱であるワクチン接種の早期開始が急務として、人類初のmRNAワクチンへの期待感は大きかった。但し開発から実使用までの期間が余りにも短く、安全性の問題が払拭されないままでの見切り発車であったことは否めない事実であろう。 安房医師会ではワクチン接種に先立ち自治体担当者を交えたワクチン対策会議を早々に立ち上げ、ほぼ2週間ことに情報交換を行うと共に、高齢者施設などへの訪問接種も円滑に行えるよう対策を講じてきた。幸い各医療機関の協力もあり、2021年6月からまずは高齢者を対象としたワクチン接種をいち早く開始することができた。 mRNAワクチンについては、当初95%の有効性を有し、2回の接種で十分な免疫力(終生免疫)が得られるとアナウンスされていたことから、我々がまず行うべきは早期に集団免疫を獲得することであり、そのためにもより多くの住民に、そしてより迅速にを目標にワクチン接種を行なった。当初、菅首相は国会で1日100万回接種を目指すと答弁していたが、気がつけば1日の接種回数は150万回にも達していた。のちに批判の対象に挙げられることにもなったが、接種実施医療機関に対する手厚い補助金が功を奏したこともあり、ワクチン接種体制から見た我が国における感染対策は万全を期した感があった。しかし2021年11月に南アフリカでオミクロン株が発見されたのを契機に日本の感染状況は一変してしまった。いわゆる第6波以降の感染爆発である。 最近になり(トランプ政権となってさらに)SARS-CoV-2武漢株の研究所流出説はほぼ確定的となったが、オミクロン株(弱毒株)においては更に合目的的とも思えるような不自然な変異が多数存在することが判明した。その結果、ウイルス要因としての感染力増大(ACE 2 receptorを介さないウイルス侵入?)とともに、ワクチン接種による負の要因としてのIgG4の増加やADE(抗体依存性感染増強)なども感染爆発の要因になったと考えられている。だとすれば、これら要因はスパイクタンパクを合成するmRNAワクチンの不可避的欠陥なのか、それとも頻回接種がもたらした予期せぬ結果だったのであろうか。 イスラエルはmRNAワクチン接種をいち早く行なった国の一つであるが、4回目の接種後にこれまでにないほどの感染爆発を来たし、以後接種を中止したところ、その後2回の小さな波を経てCOVID-19が終息している。逆に我が国では5日目の接種以降、新規感染者数が世界で最多という汚名を着せられることになる。世界中の多くの国がワクチン接種をほぼ3回で中止している中、日本だけが頻回接種を行い、そして今もなお我々の医療機関ではCOVID-19患者の来院が絶えることがない。 現在、世界中のラボでウイルスの機能獲得研究が行われていることはすでに周知の事実であり、今後再び偶発的に、あるいは何らかの意図を持って流出する可能性は全くないとは断言できない。それらに対するfirst aidとしてmRNAワクチンは理論上有力な手段の一つであることは間違いない。しかしその一方で、その副反応である接種後の死亡や種々の疾病報告は枚挙にいとまがない。すなわちmRNAワクチンは諸刃の剣と言っても決して間違いではないだろう。 昨年10月から高齢者を対象に定期接種が開始されたが、全国的に見ても接種者数は大幅に減少している。ネット情報を通じて、すでに多くの高齢者もワクチン接種の必要性と安全性に強い疑問を感じているのではないだろうか。オミクロン株以降、mRNAワクチンは重症化予防にのみに有効であると厚労省は伝えているが、これとて科学的根拠がどこにあるのか実に疑わしい。 あれほど恐れられたCOVID-19は、5年の歳月を経て通常の感冒と何ら変わらぬ感染症になった。この現状において、今後も定期接種としてmRNAワクチンを打ち続けることが果たして是と言えるのかどうか。むしろこのワクチンが本当に必要となるような緊急事態の際に、国民の不信感が集団接種の阻害因子となることの方がより重大な問題なのではないだろうか。 今一度、mRNAワクチンの定期接種化に対し、改めて議論されることを願っている。


